December 2015

Volume 30 Number 13

新進気鋭 - 長期戦

Krishnan Rangachari | December 2015

社会に出て間もないころは、「情熱」を無理やり見つけようとしていました。最初に情熱を傾けたのはコーディングでした。しかし、それは目新しさが薄れ、責任が重くなるまでのことでした。このように不快感を覚えるのは、情熱を傾ける場所がほかにあるからだと考えました。それからの数年間というもの、職務、会社、業界を何度も変え、ときには行きつ戻りつを繰り返しました。キャリアに関する本を数え切れないほど読み、性格分析テストを受け、キャリア カウンセラーに相談に行き、何度も面接に出向きました。

新しい仕事に就くと、その仕事に没頭し、ようやく情熱が向かう先を見つけたと思うのですが、やがて (結局のところは) 退屈するようになり、また転職してしまうのです。

今考えれば、自分が抱える不快感を、キャリアを形成する過程の一段階ではなく、解決すべき問題だと考えていたのでしょう。やがて、自分が繰り返すサイクルに共通する特徴が 1 つだけ存在することに気付きました。それは「自分」です。だから、問題を解決しても、いずれはまた不満を抱えることになります。私がしていたのは「情熱探し」です。イメージしていたキャリアは、困難がなく、絶えず満足を得られる職場です。この空想と現実に矛盾が生じると逃げ出すのです。

満足感を得るために環境を変えたいと思い、自分の将来に全面的な責任を負うのを避けていました。たとえば、新興企業に転職するのは、同僚の年齢が下がり、友人関係が広がり、社会生活が向上するとイメージしていました。悲しいかな、これが自分の社会的恐怖に対処するのを避ける方法でした。自分の性格上の問題に真正面から立ち向かうことなく、悪いのは働いている会社だと考えていたのです。

現在は、「好きな仕事をする」ことで当たりを探そうとするのではなく、既に当たりは引いていると考えるようにしています。情熱を見つだす作業は 1 回きりのことではありません。1 つの仕事や 1 つのキャリアに限ったことでもありません。「今していることを愛し」て自己啓発していく長期的なプロセスです。

長い時間をかけてさまざまなキャリアや仕事に就くことを自分に許してきました。キャリアを選択するとき、その瞬間に是か非か、成功か失敗かが決まると考え、感情的に自分に重責を負わせ、どんなに小さな間違いも許すことができませんでした。仕事では、役職や所属する業界とは無関係に、自分以外のもの (顧客や同僚への対応など) を重視して高い目標を設定しました。途中で何かを変えることは、失敗に甘んじず成長しているのだと考えていました。

過剰な熱意

キャリア初期の仕事の 1 つでは、週に 60 ~ 80 時間働き、あっという間に燃え尽きたことがありました。自分を追い詰め、仕事を完全に辞めることでしか治せないほどの無感覚に陥りました。働きすぎの激動の数年間から体が回復するまで、とてつもなく非生産的なもやの中で何か月もの時間を無駄にしました。

「本当のプログラマー」の意味を自分の思い込みで決め付けていました。数年後には天下の上場企業になることを目指して何日も帰宅しない新興企業の幹部や、家族を顧みないエンジニアの話を耳にしていました。これは失敗以外の何ものでもありません。

ゆっくりと時間をかけて、仕事が唯一の救世主であるという見方を捨てることで、この燃え尽き状態から立ち直ることができました。現在では、スピリチュアル リトリートに通う、趣味を育てる、自己啓発の授業を受ける、親密な関係を構築する、日記をつける、助言をする、助言を受ける、自然の中に身を置く、昼寝をする、めい想をする、本を読む、ハイキングをするといった行動に出ます。こうした行動から、仕事だけでは満たすことのできない欲求を満たすようにしています。

また、初期に現れる兆候 (家族にイライラする、ぼーっとする、気分が落ち込むなど) を、「緩やかな休息」を取る合図にしています。初めのうちは、週末や夜間に仕事をせず定時で退社する、携帯電話から仕事用の IM を削除するなど、自分を大切にすることに恥ずかしさを感じていました。周りにはセルフケアを顧みない同僚があふれていたからです。

しかし、プラスの効果 (平穏と満足感を得る、昇進や昇給を受ける、生産性が上がる) を感じるようになって、自分が長期戦を戦っていることに気付きました。それも、仕事だけではなく、人生のあらゆる面での戦いです。自分を大切にして燃え尽きないようにすれば、これからの 6 か月だけではなく、これからの 60 年にわたって仕事、家族、友人に対してより良い貢献を変わらず続けられるように再充電されます。


Krishnan Rangachari は、テクノロジー業界のキャリア コーチを務めています。彼は、カリフォルニア大学バークレー校の最年少卒業生の 1 人です。18 歳で Microsoft に正社員として入社し、20 歳のときには所属部署では史上最速の出世頭になりました。Rangachari は、数多くのテクノロジー企業で開発や製品を担当する上級職として勤務してきました。radicalshifts.com (英語) にアクセスすると、彼が提供するキャリア成功キットを無償でダウンロードできます。