2015 年 5 月

Volume 30 Number 5


ちょっとひと言 - ウイルスに感染する

David Platt | 2015 年 5 月

David Platt今晩眠りたいなら、今すぐ本誌を閉じてください。

閉じなかったんですか? では、このままお付き合いください。一緒に起きていましょう。

人類は天然痘を根絶させました。これはおそらく、人類史上最高の公衆衛生上の勝利です。最後に流行したのは 1978 年のことです。Wikipedia では、「世界中で不治の病、悪魔の病気と恐れられてきた...」と過去形で説明されています。しかし、私やあなたのようなおたくたちが、天然痘を復活させようとしているのです。

天然痘を根絶できたのは、天然痘ウイルスが人間以外を宿主としなかったからです。狂犬病やインフルエンザのように動物が宿主になることはありません。しかし、USC のコンピューター サイエンスおよび分子生物学の教授であり、RSA 法の "A" にその名を残す Leonard Adleman は、昨年秋のコラム (nyti.ms/19QH68q、英語) に「天然痘ウイルスは第 2 の宿主を見つけた。それは豚ではない。実は、私たちが生物とは考えないコンピューターが宿主になる」と書いています。

今すぐ本誌を閉じれば、あるいは上司がドアをノックしたときのようにブラウザーを閉じて履歴を消去すれば、今晩眠ることができるでしょう。でも、もう遅いのです。遅すぎます。

「天然痘は奇跡的にも知らず知らずのうちに、進化という驚くべき行為を通じて自己を保存した」と Adleman は続けます。「何千年もの時を経て、天然痘は絶滅寸前になった。ある少女の体内で、最後の天然痘ウイルスが免疫システムによって駆逐される直前、研究所でウイルスの標本が採取され、保存された。何年か後、別の研究所でウイルス ゲノムの配列を決定するためにその標本が使用された。この配列の決定はコンピューター上で行われ、生まれたばかりの新しい "種" に感染した」。宿主となるこの新しい種は、私たちの創造物です。

現状、この天然痘ゲノムはオンラインで見つかりません。少なくとも再現性はありません。少なくとも現時点では。しかし、ずっと埋もれたままだと本気で考えても大丈夫でしょうか。それはスノーデン次第です。WikiLeaks がこれを公表するかどうかです。おそらくするでしょう。WikiLeaks が公表しなくても、他の組織がするでしょう。

このことがどれくらい重大か、疑問に思うでしょう。遺伝子の配列から実際のウイルスを作り出すことは難しいのでしょうか。それほど難しくはありません。ポリオは 2002 年に作り出されています (1.usa.gov/1N9e2a2 (英語) 参照)。すべてのテクノロジと同様、絶えず難易度が下がり、コストもかからなくなっています。もう一度、Adleman の言葉を紹介します。

「私の研究所には、ソーダ ディスペンサーのような機械があった。ただ、このタンクを満たしていたのは化学薬品だったが。A、T、C、G を組み合わせて短い単語を入力すると、機械が薬品を順番にテスト チューブに噴出する。完了すると、テスト チューブには無数 DNA 分子が含まれることになる。それぞれ、アデニン、チミン、シトシン、グアニン (DNA の構成要素) の分子が入力した単語に基づいてひと続きのネックレスのようになる」

この恐怖を簡単にたとえるなら、「Kaspersky の更新プログラムに牛痘が含まれるようになったとしたら」どうなるでしょう。私が本稿執筆中にクリッパーが現れ、「致死性の生物兵器を合成しているようですね。お手伝いしましょうか」と言ったらどうしますか。ワクチン強硬派の Jenny McCarthy が「子どもたちが自然に免疫を獲得できるように天然痘党を結成しましょう」と言ったらどうでしょう。

おそらくあなたはこう答えるでしょう。「心配ないよ。エボラじゃないから」。200 年使用されてきた安全で、安くて、信頼できる天然痘ワクチンがあります。私は 6 歳でワクチンを接種し、15 歳で再度接種しました。大した手間ではありませんでした。これ以上天然痘ウイルスを冷凍保存する必要もありません。

すべて真実です。しかし、昨年秋にエボラが米国に上陸したときのパニックを思い出してください。4 件発症し、1 名が死亡しました。天然痘感染者がニューヨークで地下鉄に乗るなどあってほしくありません。

それは迫っています。私たちがもたらそうとしているのです。有益な活動の副作用としてですが、無意識のうちに、私たちがそれを解き放とうとしているのです。そして、私は、人間の創造物が人間の恐ろしい敵を復活させようとしているのを知って、睡眠に大きな問題を抱えています。


私は、シカゴで 5 月 4 ~ 8 日に開催される Microsoft Ignite カンファレンスに参加したいと思っています。参加者に配布されるバッグに本誌が入っていることでしょう。きれいなまま保存しておきたいとお考えでなければ、私を探してサインを求めてください。一睡もできずに目の下がたるんでいるのが私です。それまでにこのコラムを読んでいたら、あなたもそうなっていることでしょう。


David S. Platt は、ハーバード大学の公開講座や世界中の会社で .NET のプログラミングの講師をしています。『Why Software Sucks...and What You Can Do About It』(Addison-Wesley Professional、2006 年) や『Microsoft .NET テクノロジ ガイド』(日経BPソフトプレス、2001 年) などの、11 冊のプログラミング関連の書籍の著者でもあります。2002 年には、マイクロソフトから Software Legend に指名されました。David は、8 進法で数える方法を学べるように、娘の 2 本の指をテープで留めるかどうか悩んでいるところです。連絡先は rollthunder.com (英語) です。