IRP の前処理および後処理

[アーティクル]
09/23/2010

ドライバーは、フレームワークによる I/O 要求パケット (IRP) の処理の前後にその IRP を途中で受信する必要がある場合、WdfDeviceInitAssignWdmIrpPreprocessCallback を呼び出して、メジャー I/O 関数コード、および必要に応じてそのメジャーコードに関連付けられた特定のマイナー I/O 関数コードについて、EvtDeviceWdmIrpPreprocess イベントコールバック関数を登録できます。これにより、ドライバーが指定されたメジャー関数コードおよびマイナー関数コードを含む IRP を受信すると、フレームワークによってドライバーの EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数が呼び出されます。

EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数では、IRP の前処理に必要なすべての操作を実行できますが、処理の完了後は、ドライバーがフレームワークでサポートされていない IRP を処理する場合を除き、WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp を呼び出して、IRP をフレームワークに戻す必要があります。

ドライバーが WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp を呼び出すと、フレームワークは、ドライバーで EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数が指定されていない場合と同様に IRP を処理します。IRP の I/O 関数コードが、フレームワークからドライバーに渡されるコードである場合、ドライバーはその IRP を要求オブジェクトとして再度受け取ります。

下位ドライバーによって IRP が完了された後に、ドライバーが IRP を後処理する必要がある場合、ドライバーの EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数では、WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp を呼び出す前に IoSetCompletionRoutine を呼び出して、IoCompletion ルーチンを設定できます。

ドライバーが WdfDeviceInitAssignWdmIrpPreprocessCallback を呼び出すと、フレームワークは、すべての IRP に別の I/O スタックの場所を追加するよう I/O マネージャーに要求して、EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数で IoCompletion ルーチンを設定できるようにします。このコールバック関数では、WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp を呼び出す前に、IRP の I/O スタックの場所のポインターを更新する必要があります。

WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp の呼び出し

I/O マネージャーによって IRP に別の I/O スタックの場所が追加されるので、IRP の次の I/O スタックの場所を設定するために、EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数では、WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp を呼び出す前に、IoSkipCurrentIrpStackLocation または IoCopyCurrentIrpStackLocationToNext を呼び出す必要があります。

ドライバーで IRP の前処理のみを行い、後処理は行わない場合、ドライバーで IRP の IoCompletion ルーチンを設定する必要はありませんが、IoSkipCurrentIrpStackLocation を呼び出すことができます。次にコード例を示します。

  NTSTATUS
  EvtDeviceMyIrpPreprocess(
    IN WDFDEVICE Device,
    IN OUT PIRP Irp
    )
{
//
// Perform IRP preprocessing operations here.
//
...
//
// Deliver the IRP back to the framework. 
//
IoSkipCurrentIrpStackLocation(Irp);
return WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp(Device, Irp);
}

ドライバーで IRP を後処理する場合、ドライバーは、まず IoCopyCurrentIrpStackLocationToNext を呼び出し、次に IoSetCompletionRoutine を呼び出して、IRP の IoCompletion ルーチンを設定する必要があります。次にコード例を示します。

  NTSTATUS
  EvtDeviceMyIrpPreprocess(
    IN WDFDEVICE Device,
    IN OUT PIRP Irp
    )
{
//
// Perform IRP preprocessing operations here, if needed.
//
...
//
// Set a completion routine and deliver the IRP back to
// the framework. 
//
IoCopyCurrentIrpStackLocationToNext(Irp);
IoSetCompletionRoutine(
                       Irp,
                       MyIrpCompletionRoutine,
                       NULL,
                       TRUE,
                       TRUE,
                       TRUE
                      );
return WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp(Device, Irp);
}

ドライバーの EvtDeviceWdmIrpPreprocess コールバック関数が受信したデバイスオブジェクトハンドルが物理デバイスオブジェクト (PDO) を表しており、IRP のメジャー関数コードが IRP_MJ_PNP または IRP_MJ_POWER である場合、ドライバーで IoCopyCurrentIrpStackLocationToNext を呼び出さないでください (したがって IoCompletion ルーチンを設定しないでください)。これを呼び出すと、Driver Verifier によってエラーが報告されます。

IoCopyCurrentIrpStackLocationToNext、IoSkipCurrentIrpStackLocation、および IoSetCompletionRoutine を呼び出すタイミングの詳細については、「ドライバースタックの下位ドライバーへの IRP の移動」(英語の可能性あり) を参照してください。

IRP の前処理および後処理

WdfDeviceWdmDispatchPreprocessedIrp の呼び出し

その他のリソース