Office 2013 の開発者のための新機能

開発者に関係のある Office 2013 の機能および技術について説明します。

**適用対象:**apps for Office | apps for SharePoint | Office 2013 | Office 365 | SharePoint Foundation 2013 | SharePoint Server 2013

Office 2013 の概要

Office 2013 はこれまでにない生産性を提供します。このリリースには、ユーザーにも開発者にも同じように喜ばれる機能が含まれます。ユーザーがどこにいても、Office 2013 はユーザーについて移動し、タッチ対応環境を含むほとんどすべてのデバイスに、電子メール、重要なドキュメント、連絡先、カレンダー、個人設定を取り込みます (図 1 を参照)。

図 1. 生産性を高める Office 2013 のエクスペリエンス

Office 2013 プレビューの生産性を向上させるエクスペリエンス

Office 2013 は Web を Office クライアント アプリケーションに組み込みます。動的な Web アプリケーション開発環境で、新しいシナリオとソリューションを利用できます。Python、PHP、Perl、JavaScript などの動的な言語、および Microsoft Visual Studio 2012 などの Web 開発ツールを使用して、アプリを開発できます。

Web と Office の統合

Office 2013 は、Web をユーザーが慣れ親しんだ Office アプリケーションと統合します。これにより、開発の焦点は固有の言語 (Microsoft Visual Basic for Applications) から Web ベースの言語 (HTML、CSS、JavaScript など) に移り、Web 開発スキルを Office 開発に利用できるようになります。Web ベースの機能を Office アプリケーションに追加するには、Office アドイン (旧コードネーム "Agave") を使用します (図 2 を参照)。

図 2. Web を Office アプリケーションに組み込む

Office アプリケーションへの Web の組み込み

Office アドインについては後で詳しく説明します。Office 2013 には次の重要なコンポーネントが組み込まれています。

Office でのブラウザー

Office 2013 では、開発者が使い慣れたサービスと技術が引き続きサポートされ、さらに Web との簡単な統合が導入されています (図 3 を参照)。

図 3. 従来の機能を引き続きサポートする Office 2013

従来の機能を引き続きサポートする Office 2013 プレビュー

データと Web コンテンツを統合するリッチなビジュアルのソリューションを作成することで、最良の Web を Office アプリケーションに組み込むことができます。また、Visual Studio 2012 の新しい強力なツールを使用すると、開発を合理化できます。Office 2013 では、コード ソリューションは同じコード ベースを使用することで異なるアプリケーションやデバイスでも動作するので、設計やデザインを流用することによって開発コストを抑えることができます。

この最新の開発プラットフォームにより、Web のソリューションが Office の完全に対話形式のブラウザーに似たエクスペリエンスに組み込まれるので、JavaScript、HTML5、JQuery などの標準ベースの Web 言語を使用してソリューションの開発時間を大幅に短縮できます。たとえば、カスタマー リレーションシップ マネジメント データベースの営業データと Bing Maps Web サービスを組み合わせて、いっそう効果的な営業レポートを作成できます。

JQuery は JavaScript 標準に基づくライブラリです。

Office 2013 はエンタープライズ ソリューションを構築するための堅牢なプラットフォームです。Office 2013 には次のような利点があります。

  • 開発時間の短縮

  • 基幹業務 (LOB) システムとの容易な統合

  • 安全で信頼性の高いプラットフォーム

  • 簡単な開発と管理

Office ストア

Office 2013 には、Microsoft Office ソリューション用の Office ストアが用意されています。Office ストアを使用して、組織のソリューションを購入できます。また、組織ではアプリ カタログと呼ばれる内部ストアを利用することもできます。アプリ カタログでは、社内開発または社外開発の区別なく、すべての企業ソリューションが一元的に提供されます。これにより、IT 部門はソリューションを集中的に管理および監視でき、ユーザーはソリューションを簡単に見つけられるようになります。

Office ストアを使用すると、IT 部門とエンド ユーザーに複数のメリットがあります。

  • 管理の簡素化: すべてのソリューションを一元的に管理できます

  • セキュリティの強化: アプリとセキュリティの脅威を 1 箇所で監視できます

  • 集中構成: ソリューションの可視性と可用性を管理し、集中的な構成を使用して悪質なコードを無効にできます

  • 検出可能性: ソリューションを簡単に見つけてダウンロードできます

  • リモート実行: ユーザーのコンピューターにインストールしなくてもソリューションを利用できます

テレメトリと分析

組織内のファイルとソリューションの数が増えると、管理とセキュリティの作業は複雑になり、コストが上昇します。Office 2013 を使用して最も頻繁に使用されるソリューションを識別すると、アップグレード プロセスが簡単になります。また、Office 2013 には展開されているソリューションの正常性に関する情報を提供するテレメトリ機能があるので、全体的な IT 管理コストを削減しながら、サービスの品質を上げることができます (図 4 を参照)。展開されているアプリケーションの正常性を管理するための新しいツールは、Office テレメトリ ダッシュボードと呼ばれます。

また、Office 2013 テレメトリ ログ を使用すると、以前のリリース以降に廃止、非表示、または変更されている特定のプログラミング エンティティ (コレクション、クラス、列挙、メソッド、プロパティ) を識別できます。これにより、Office 2013 と互換性のないコードをすばやく識別して、ソリューションをリファクタリングできます。

図 4. Office テレメトリ ダッシュボード

Office テレメトリ ダッシュボード

共通の JavaScript オブジェクト モデル

Office 2013 アプリケーションの開発プラットフォームは、Web ベースの開発用の共通 API (図 5 を参照) が基になっています。これを可能にしているのは、Office が読み取ったり、書き込んだり、バインドを確立したりできる多数の共通オブジェクトです。個別の Office 2013 アプリケーション開発用には Microsoft Visual Basic for Applications (VBA) が引き続きサポートされています。

図 5. Office の共通 API

Web 拡張機能 JSOM 開発アーキテクチャ

Office の新しい Web 対応機能の他にも、Office 2013 アプリケーションの役に立つ機能が追加されたり強化されたりしています。以下では、Office 2013 製品の利点についてさらに詳しく説明します。

Access

Access 2013 は、Microsoft Windows の開発に関する以前のシナリオのときと同じように、Web 開発が簡単になるように作られています。Access 2013 を使用すると、LOB アプリケーションの実行に使用できるアプリケーションをすばやく作成できます。

データ中心アプリケーション

Access 2013 には、データ中心 Web アプリケーションを作成できるようにすることだけを目的として設計された新しい機能が組み込まれています。Access Services は、Microsoft SQL Server 2012 または SQL Azure を使用してデータを格納します。SQL Server を使用してデータを格納すると、管理性と拡張性が向上します。

他のテクノロジとの統合

標準のテクノロジを使用することにより、Access 2013 では Access アプリケーションのカスタマイズに使用できる開発者向けツールの数が大幅に増えています。SQL Server をデータ ストアとして使用したため、Access 2013 では Access アプリケーションの管理性と拡張性が飛躍的に向上しています。Office 365 および SQL Azure との互換性により、Access アプリケーションの範囲が大きく広がっています。

Access 2013 の機能の詳細については、「Access 2013 の開発者向け新機能」を参照してください。

Office 用アプリ

Office アドインにより、サポートされる Office 2013 クライアント アプリケーションで新しい拡張モデルが有効になります。この新しいモデルは、Web 開発者が Office クライアント アプリケーションを拡張する Web ベースのソリューションを簡単に作成できるように作られています。Office アドインは基本的には Web ページであり、Office クライアント アプリケーション内でホストしてドキュメントで拡張コンテンツや機能を提供したり、クライアント アプリケーションと関連付けられた作業ウィンドウでホストしたり、電子メール メッセージでコンテキストに応じてアクティブ化したりできます。Office アドインは、HTML、CSS、JavaScript、REST などの標準 Web テクノロジを使用して Office クライアント アプリケーションを拡張する新しい方法を提供します。

Office アドインを実装するための新しい JavaScript ベースの API は、共通とアプリケーション固有の両方のデータ型、オブジェクト、関数、イベントにより、複数の Office クライアント環境の Microsoft Office ドキュメントおよびアプリケーションへの簡単で一貫したプログラム アクセスを提供します。Office アドイン ライブラリの JavaScript API には、サポートされる Office ドキュメントの読み取りや書き込みを行ったり、重要なアプリケーションおよび選択変更などのユーザー イベントを処理するための、オブジェクトとメンバーが用意されています。

アプリは、パブリックな Office ストア、SharePoint 上のプライベートなアプリ カタログ、ファイル共有、または Exchange サーバーにアップロードできます。

  • Office ストアへの発行: Office 2013 では、ユーザーは Office.com でホストされるパブリック マーケットプレースでソリューションを直接探すことができます。Office ストアは、消費者向けおよびビジネス向けの新しいアプリ ソリューションをアップロードするのに便利な場所です。開発者がアプリをパブリック マーケットプレースにアップロードすると、マイクロソフトによってその検証チェックが行われます。

  • アプリ カタログへの作業ウィンドウとコンテンツ アプリの発行: 作業ウィンドウとコンテンツ アプリの場合は、IT 部門はプライベート アプリ カタログを作成して構成することにより、Office ストアと同じ Office ソリューション カタログ エクスペリエンスを提供できます。IT 部門は、この新しいカタログと開発のプラットフォームを利用することで、管理対象のユーザーに対して Office アプリと SharePoint アプリのプロビジョニングを一元的に効率よく進めることができ、それぞれのクライアントに対してソリューションを個別に展開する必要がありません。

  • ファイル共有カタログへの作業ウィンドウとコンテンツ アプリの発行: もう 1 つの方法として、企業の設定では、社内または社外の開発者が開発した作業ウィンドウとコンテンツ アプリを中央のファイル共有に発行し、マニフェスト ファイルを格納して管理できます。どちらの場合も、後で開発者がアプリを更新するときは、更新をエンド ユーザーにプッシュしたり、IT 部門が企業ユーザーに対して再展開したりする必要はありません。

  • Exchange Server へのメール アプリの発行: Outlook 用のメール アプリを、Exchange Server のユーザーが使用できる Exchange カタログにインストールできます。このカタログにより、企業のメール アプリ ソリューション (内部で作成されたものや、Office ストアから入手できる企業用にライセンスされたソリューションなど) を公開して管理できます。サーバー管理者は、Exchange 統合管理コンソール (UMC) を使用するか、リモート Windows PowerShell コマンドレットを実行して、Exchange カタログに Outlook 用アプリをインストールします。

    ユーザーも Outlook 用アプリをインストールできます。Outlook リッチ クライアントまたは Outlook Web App (OWA) のどちらのユーザー インターフェイスでも、クリックして Office ストアからアプリをインストールできます。

Office アドインでは、ブラウザーの Web ページとほぼ同じことを行うことができます。

  • DHTML および JavaScript による対話型 UI およびカスタム ロジックの提供

  • JQuery や JQueryUI などの JavaScript フレームワークの使用

  • HTTP および AJAX による REST や Web サービスへの接続

同様に、Office アドインは、ドメイン分離のための同一生成元ポリシー、セキュリティ ゾーンなど、ブラウザーの Web ページによって課せられるのと同じ制限を受けます。

Office アドインのオプション:

  • 作業ウィンドウ Office アドインを使用すると、拡張機能と Office ドキュメントを並べて表示できます。たとえば、ドキュメントで強調表示されている製品名に基づいて Web サービスからの情報を見ることができます。

  • コンテンツ Office アドインを使用すると、Web ページを埋め込みコンテンツとしてドキュメントの一部にし、ドキュメント内に表示できます。たとえば、YouTube のビデオ クリップや画像ギャラリを統合できます。

  • メール Office アドインは Outlook 2013 および OWA と連携して、特定のメール アイテムやカレンダー アイテムのコンテンツを表示できるようにします。

次の表では、Office 2013 の各製品でサポートされる Office アドインの種類を示します。

表 1. 製品別のサポートされる Office 用アプリの種類

製品

サポートされる種類

Excel 2013

作業ウィンドウ

コンテンツ

Excel Online

コンテンツ

Word 2013

作業ウィンドウ

Outlook 2013

メール

Outlook Web App

メール

Microsoft Project Professional 2013

作業ウィンドウ

Office アドインは、図 6 および図 7 で示すように、マニフェスト XML ファイルと Web ページで構成されます。

図 6. Office 用アプリの基本コンポーネント

Office 用アプリの基本コンポーネント

図 7. 基本的な Office 用アプリのサンプル

基本的な Office 用アプリのサンプル

Office アドインの詳細については、「Office 用アプリの構築を開始する」を参照してください。

Office 用アプリのサンプル

Office アドインの例については、図 8 を参照してください。これは Excel 用の作業ウィンドウ アプリです。業務で LOB データを毎日使用するものとします。この例では、作業ウィンドウのデータをドキュメントに挿入し、そのデータを読み取って作業ウィンドウのボックスに挿入することで、ドキュメントと対話します。

図 8. Excel 用作業ウィンドウ アプリ

Excel 用作業ウィンドウ アプリ

Office アドインによって提供されるリッチな Web 統合により、データと Web コンテンツの両方に一度にアクセスし、データの高度な分析を実行できます。

同様に、図 9 で示されているのは Excel 用コンテンツ アプリの類似ソリューションです。この場合は、Web ブラウザーとコンテンツが統合されています。

図 9. Excel 用コンテンツ アプリ

Excel 用コンテンツ アプリ

Visual Studio 2012 の Office 用アプリ ツール

Visual Studio 2012 には、Office アドインのテンプレートが含まれています (図 10 を参照)。

図 10. Visual Studio の Office 用アプリ テンプレート

Visual Studio の Office 用アプリ テンプレート

Visual Studio 2012 で Office アドイン プロジェクトを作成すると、必要なファイルがすべて自動的に作成されます。

  • App1.html: サンプル Web ページ

  • App1.xml: マニフェスト ファイル

  • App1.js: スクリプト ファイル

  • App1.css: カスケード スタイル シート

  • Office.js: Office クラス ライブラリ ファイル

また、テスト用にプロジェクトを実行すると、特定の Office アプリケーションが自動的に起動されます。

マクロおよびアドイン モデルのサポート

一般に、Office 2013 ではデスクトップ コンピューターで実行される Office リッチ クライアント用の COM ベースの Office クライアント オブジェクト モデルが引き続きサポートされます。ただし、Office 用アプリ プラットフォームの利点をできる限り活用することをお勧めします。新しいソリューションを作成する前に、シナリオに優先順位を付け、Office 用アプリ プラットフォームを使用して新しいソリューションを開発できないかどうかを確認してから最終的な決定を下してください。

注意

決定プロセスの詳細と例については、「Outlook 用のソリューションを開発するための API またはテクノロジの選択」を参照してください。

Windows 8 RT が動作する ARM ベースのデバイスで実行される Office Home & Student 2013 RT は例外です。このエディションには Excel 2013、OneNote 2013、PowerPoint 2013、および Word 2013 が含まれています。ARM デバイスではメモリ容量が限られるため、このエディションの Office ではマクロ (.XLM ファイルを含む)、アドイン、および ActiveX コントロールはサポートされません。

Excel

Excel 2013 は、強力なビジネスおよび財務ソリューションを開発するためのプラットフォームです。Excel 2013 をカスタマイズおよび拡張するためのコードを作成する方法はいくつもあります。操作の自動化、ユーザー インターフェイスのカスタマイズ、データ入力フォーム、ユーザー定義関数での式の拡張などは、そのほんの一部です。

新しいワークシート関数

Excel 2013 には、OpenDocument 形式 (ODF 1.2) との互換性を確保するために約 50 個の新しいワークシート関数が追加されています。

クイック分析

クイック分析機能 (図 11 を参照) は、文脈に応じた UI です。これにより、1 回のクリックで、数式、条件付き書式、スパークライン、テーブル、グラフ、ピボットテーブルなど、さまざまなデータ分析機能にアクセスできます。Excel 2013 では、新しいクイック分析機能の表示を、プログラムを使用して有効または無効にすることができます。

図 11. クイック分析

分析レンズ

新しいデータソースの使用

OData フィード、Azure、SharePoint データ フィード、その他の OLE DB プロバイダーを含め、PowerPivot でサポートされる一連の新しいデータ ソースに接続できます。

DataModel OM を使用するプログラミング

新しい DataModel オブジェクト モデル (VBA オブジェクト モデルの一部) では、プログラムを使用して、データ ソースの読み込みと更新を行うことができます。

ピボットテーブルから独立したピボットグラフの作成

Excel 2013 では、ピボットグラフをピボットテーブルから切り離すことができます。OLAP に基づくピボットテーブルまたは PowerPivot データ ソースからピボットグラフを切り離すことで、ピボットグラフをピボットテーブルから独立して作成したり、ピボットグラフのみの環境でデータ操作を行ったりできます。これは、ピボットテーブルの付随物としてピボットグラフが作成される現在のパラダイムとは対照的です。この切り離し機能は、Excel 2013 クライアントおよび Microsoft Excel Services で提供されます。

シングル ドキュメント インターフェイス

Excel 2013 におけるシングル ドキュメント インターフェイス (SDI) への変更は、プログラミングに影響します。SDI によって、各ブックは独自のトップレベル アプリ ウィンドウおよび独自の対応するリボンを持つことになります。

プログラムによるアニメーションのオンとオフの切り替え

Application オブジェクトの新しい EnableMacroAnimations プロパティを使用して、アニメーションの表示を切り替えることができます。既定では、マクロの実行中は、アニメーションは無効にされています。アニメーションを有効にするには、マクロを開始する場所に Application.EnableMacroAnimation = True を追加します。マクロの実行中に Excel でアニメーションを表示できるようにするには、マクロごとにこの設定を行う必要があります。

Web サービス関数の使用

Web サービス関数 ([Web] 関数カテゴリ内にある) を使用して、REST Web サービスへの匿名アクセスができるようになりました。

Excel 2013 の機能の詳細については、「開発者向け Excel の新機能」を参照してください。

InfoPath

InfoPath 2013を使用すると、Microsoft SharePoint Server プラットフォーム上にリッチなフォーム ベースのアプリケーションを簡単に構築できます。

Office 2013 製品との統合の強化

InfoPath 2013 は他の Office プログラムおよびサーバーとの最適な統合を提供し、よりよい方法でデータを収集、整理、管理できるようにします。既存の InfoPath ソリューションは、Office 2013 アプリケーションおよび SharePoint Server でも引き続き動作します。このリリースの InfoPath 2013 には、新しい機能またはシナリオは導入されていません。

コードを作成および編集する新しい方法

Microsoft Visual Studio Tools for Applications IDE は、Microsoft InfoPath Designer 2013 では削除されています。InfoPath Designer 2013 でフォーム コードを作成または編集するには、Visual Studio 2012 および Visual Studio Tools for Applications 11 アドインが必要です。プログラミング エクスペリエンス自体に変更はありませんが、InfoPath フォーム用のマネージ コードを作成するときは、完全な Visual Studio 開発エクスペリエンスを使用できるようになっています。

OneNote

OneNote 2013 は、メモやアイデアを保存するのに最適な場所であり、日常の記録を残すのに役立ちます。テキスト、画像、オーディオ、ビデオをメモとして取得し、友人や同僚と共有できます。新しいプロパティにより、アドインは埋め込み Office ドキュメントの新しい種類と対話でき、特定の種類のコンテンツが含まれるページのパフォーマンスも向上します。

埋め込みファイル

OneNote 2013 では、Excel や Visio のファイルを、ファイルとして単に添付するのではなく、ライブ ドキュメントとしてページ内に埋め込むことができます。これにより、ユーザーは、OneNote 内のコンテンツと直接対話できるようになり、Excel や Visio でドキュメントを開く必要はありません。これらの新しいドキュメント種類に対しては、XML スキーマで複数の新しいプロパティが公開されています。

クイック ファイリング ダイアログの向上

クイック ファイリング ダイアログは、ダイアログ ボックス内にヘルプ リンクを表示できるようになり、ユーザーがノートブックを作成できるようになりました。これらの追加ダイアログ ボックス機能は、プログラムで有効にできます。

パフォーマンスの向上

GetPageContent メソッドに対する新しい Page Info 型 (piFileType) を使用すると、インク、イメージ、埋め込みファイルなどのバイナリ データをデコードすることなく、ページのコンテンツを取得できます。

Outlook

Outlook 2013 では、時間と情報を総合的に管理できます。モビリティはグローバル ビジネスの重要な側面です。さまざまなデバイス上に Outlook 2013 を配置することによって、顧客は大きな競争上の優位性を得ることができます。Outlook 用メール アプリの形式での Outlook Web フォーカスにより、現在表示されているメッセージや、Exchange 2013 サーバー上に存在する予定アイテムの内部に、Web ページを表示できます。メール アプリは、アイテムのコンテキスト情報にアクセスでき、そのデータを使用してサーバー上や Web サービスの追加情報にアクセスすることで、魅力的なユーザー エクスペリエンスを生み出します。

インライン応答

Outlook 2013 で導入されたインライン応答機能を使用すると、新しい閲覧ウィンドウを開かずに、インラインで応答を作成できます。メモ作成リボンにカスタム Fluent UI コントロールを追加したり、送信前の応答メッセージにビジネス ロジックやカスタム機能を適用したりする必要がある場合は、Explorer オブジェクトの新しい InlineResponse イベントを使用するようにソリューションを変更します。

アドインの無効化

Outlook 2010 のアドイン弾力性が拡張され、Outlook 2013 ではアドインの起動、シャットダウン、フォルダー切り替え、アイテムのオープン、反復タイミングなどのアドイン パフォーマンス カウンターが監視されます。たとえば、平均起動時間が指定されている時間を超えると、Outlook はアドインを無効にして、アドインが無効にされたことの通知をユーザーに対して表示します。ユーザーはアドインを常に有効にすることができ、Outlook はアドインがパフォーマンスしきい値を超えてもアドインを無効にしません。システム管理者の管理レベルも新しく拡張され、グループ ポリシーを使用して無効にするアドインを指定できます。

Outlook 用メール アプリ

Outlook 用メール アプリでは、現在表示されているメッセージまたは予定に関するコンテキスト情報にアクセスできるので、より充実したエクスペリエンスを顧客に提供できます。Exchange 2013 だけでなく他の Web サービスの情報にもアクセスして、顧客の情報を顧客の作業に統合する魅力的なインターフェイスを作成できます。Outlook 用メール アプリは、既定ではデスクトップ上の Outlook リッチ クライアントで実行されますが、Outlook Web App やモバイル デバイスの Outlook Web App でもそのまま実行できます。そのため、顧客に対してデスクトップ、Web、および他のモバイル デバイス (タブレットやスマートフォン) でのシームレスなエクスペリエンスを提供できます。

Outlook 用メール アプリの作成には、標準の Web テクノロジである HTML と JavaScript を使用します。HTML では UI を提供し、JavaScript では Exchange 2013 または Web サービスからの情報への接続を提供します。Outlook 用メール アプリは、現在表示中のアイテムと共に表示される分離されたウィンドウ枠内で実行されます。図 12 では、電子メール メッセージの本文に表示される最初の住所の Bing Map を示します。

図 12. 状況に応じた Bing Map を示す Outlook 用メール アプリ

状況に応じた Map を示す Outlook 用メール アプリ

天気予報バーの天気予報データ サービス

Outlook 2013 の新しい天気予報バーは、MSN Weather を使用して、ユーザーが選択した場所の天気予報を表示します。サードパーティの気象データ サービスを Outlook にプラグインし、同様の天気予報を提供できます。

Outlook 2013 の機能の詳細については、「開発者向け Outlook の新機能」を参照してください。

Visio

Visio 2013 は、カスタム図面ソリューションに対する強力な単一プラットフォームを提供します。新しいオートメーション オブジェクト、コレクション、プロパティ、メソッド、列挙、イベント、および新しいファイル形式により、ソリューション内の要素の動作を定義するオプションがいっそう充実しました。

新しいファイル形式

Visio 2013 で導入された新しいファイル形式は、Open Packaging Conventions (OPC) 標準 (ISO 29500、パート 2) と、以前の Visio XML ファイル形式 (.vdx) の XML 要素が基になっています。Office アプリケーションで使用されているファイル形式に似た、圧縮される XML ベースのファイル形式です。

新しいファイル形式では、Visio 2013 と SharePoint 2013 上の Visio Services の両方でサポートされる単一の形式が提供されます。

新しいファイル形式には、次のファイル種類が含まれます。

  • .vsdx (Visio 図面)

  • .vsdm (Visio マクロ対応図面)

  • .vssx (Visio ステンシル)

  • .vssm (Visio マクロ対応ステンシル)

  • .vstx (Visio テンプレート)

  • .vstm (Visio マクロ対応テンプレート)

ファイル形式パッケージ (System.IO.Packaging など) の読み取りおよび書き込みと XML 解析に対する既存のサポートを使用することにより、あたらしいファイル形式をプログラムで処理できます。

Visio 2013 では、以前のファイル形式を引き続き読み取ることができます。Visio 2013 では、以前の Visio XML ファイル形式 (.vdx) または Visio 2010 のファイル形式には保存されません。以前の Visio XML ファイル形式 (.vdx) ファイルを使用するソリューションまたはツールは、新しいファイル形式およびスキーマを読み取るように変更が必要になる場合があります。Visio Services では、Visio Web 図面 (.vdw) 形式に加えて、新しい Visio 図面 (.vsdx) 形式および Visio マクロ対応図面 (.vsdm) 形式が表示されます。

テーマ

テーマのデザインは Visio 2013 で変更され、図形とアートの効果の統合など、より多彩な効果やスタイルを使用するようになっています。テーマを適用し、テーマのバリエーションで図を個人設定し、クイック スタイルで個別の図形を強調することで、包括的なスタイルを選択できます。シェイプシート開発者は、これらの機能と共に新しい機能およびシェイプシートのセルを使用できます。

図形の変更

Visio 2013 には、ステンシルに含まれる図形を別の図形と入れ替えて、元の図形のローカル変数を維持できる、図形置換 API が含まれます。図形の開発者は、カスタム図形のシェイプシートの設定を更新し、これらの図形の図形変更動作を指定できます。

図形の効果

面取り、3D 回転、光彩、反射、スケッチなどの新しい図形の効果が、Visio 2013 に追加されています。シェイプシート開発者は、これらの効果を使用して、いっそう斬新なルック アンド フィールの図形をデザインできます。

コメント入力

Visio 2013 には新しいコメント入力フレームワークが含まれます。コメントを特定の図形やページと関連付けることができます。Visio 2013 には、コメントを取得および設定するための API、およびシェイプシートからアクセスできないコメントが含まれます。Visio Services には、図面からコメントを取得するための JavaScript API があります。

相対ジオメトリ

Visio 2013 はシェイプシートの相対ジオメトリをサポートするようになっています。図形開発者は、相対ジオメトリを使用して、定数としてジオメトリを指定できます。このようなジオメトリは、高さまたは幅によって自動的に乗算されます。これにより、優れたパフォーマンスと小さいファイル サイズで簡単に図形を作成できます。

カスタマイズ可能なイメージ クリップ

Visio 2013 は、任意の図形にトリミングされるカスタム イメージ クリップ パスの定義をサポートします。これにより、矩形のイメージ クリップをサポートしていた Visio 2010 の機能を拡張します。この機能はシェイプシートで使用できます。

Visio 2013 の機能の詳細については、「開発者向け Visio の新機能」を参照してください。

Word

Word 2013 では、ドキュメントを作成および書式設定するための広範なツール セットが提供され、優れた外観のドキュメントを作成できます。豊富なレビュー、コメント化、および比較機能は、同僚からのフィードバックをすばやく集めて管理するのに役立ちます。高度なデータ統合により、ドキュメントはビジネス情報の重要なソースと常に関連付けられるようになります。

コンテンツ コントロールの拡張

Word 2013 のコンテンツ コントロールの再設計されたコンテンツ コントロール機能をプログラムで使用できます。新しい機能としては、反復コンテンツ コントロール、カラー コーディング、ドキュメントでのコンテンツ コントロールの外観の制御などがあります。コンテンツ コントロールはバインドされ、特定の種類のコンテンツに対するコンテナーとして機能するドキュメント内のラベル付き領域として使用できます (図 13 を参照)。個別のコンテンツ コントロールは、日付、リスト、書式設定されたテキストなどのコンテンツを格納できます。これらのコンテンツ コントロールを使用して、リッチな構造化されたコンテンツ ブロックや、適切に定義されたブロックをドキュメントに挿入するテンプレートを作成できます。

図 13. 反復コンテンツ コントロール

反復コンテンツ コントロール

読み取りモードの設定の指定

Word 2013 では読み取りモードの設定をプログラムで設定できるようになりました。このような設定としては、テキストのスケーリング、レイアウト、行の長さなどがあります。

XML マッピング用の UI

リボン UI から使用できる作業ウィンドウでコンテンツ コントロールへの XML マッピングをネイティブに作成できます。Word 2010 や Microsoft Office Word 2007 の場合のように VBA やファイル形式の操作は必要ありません。作業ウィンドウでは、ドキュメント内のコンテンツ コントロールへの XML マッピングをビジュアルに設定できます。

Word 2013 の機能の詳細については、「開発者向け Word の新機能」を参照してください。

まとめ

Office 2013 には、開発者向けに作られた多くの機能とサポート テクノロジが含まれます。目的は、開発者の時間を節約し、スキルとリソースをいっそう効果的に使用できるようにすることにより、開発者の作業を容易にすることです。Office 2013 では Web が Office に組み込まれ、さまざまなデバイスでの生産性の向上が図られています。この技術記事では、Office 2013 が提供するものの概要だけを説明しました。製品が最終リリースに至る過程では、Office 2013 のさらに多くの新機能や強化された機能やテクノロジが明らかになります。