第 2 章: Hilo 開発環境のセットアップ

Hilo Browser アプリケーションは、C++ で記述されたサンプル アプリケーションです。このアプリケーションは Win32 および DirectX ライブラリを通じて Microsoft Windows 7 オペレーティング システムのアプリケーション プログラミング インターフェイス (API) を使用します。この記事では、Hilo Browser サンプル アプリケーションをコンパイルして実行できるよう、ワークステーションに開発環境をセットアップする方法を説明します。コードの詳しい検証、および各テクノロジを選択した根拠、UI 設計、アプリケーション機能の実装については、この後の各記事で説明します。

開発者ワークステーションのセットアップ

Windows 7 は開発者向けに豊富な Windows C/C++ API 機能を提供しています。Hilo Browser アプリケーションの開発には、Visual C++ 2010 Express を使用しました。Visual C++ 2010 Express をインストールするために最小限必要なコンピューターの構成は次のとおりです。

  • 1.6 GHz 以上のプロセッサ
  • 1024 MB RAM (仮想マシンで実行する場合は 1.5 GB)
  • 3 GB の空きハードディスク領域
  • 5400 RPM のハードディスク ドライブ
  • ディスプレイ解像度 1024 x 768 以上で動作する DirectX 9 対応のビデオ カード

これから開発する Hilo アプリケーションでは Windows リボンを使用します。リボン用のコードを記述するには、Windows Software Development Kit (SDK) for Windows 7 をインストールする必要があります。この SDK には 2.5 GB以上の空き領域が必要です。つまり、すべての Hilo アプリケーションをコンパイルするために必要なソフトウェアをインストールするには、5.5 GB 以上のディスク領域が必要ということになります。SDK のインストール手順については、この後で詳しく説明します。

無料の開発環境には当然のことながら、ある程度の制約があります。しかし、意外に思われるかもしれませんが、その制約はさほど大きいものではありません。Visual Studio 2010 Express エディションでは、あらゆる機能を備えたアプリケーションを作成できる、機能的な開発環境が開発者に提供されます。

Visual Studio の各エディションの機能については、MSDN Web サイトをご覧ください。Professional エディションと比べて Express エディションに欠けている点は、32 ビット コンパイラしか提供されないところです。また、Express には ActiveX Template Library (ATL) と Microsoft Foundation Classes (MFC) ライブラリがありません。C++ コンパイラは、プロファイルによる最適化機能が提供されない点を除いて、すべての機能を備えています。また、Express エディションでは Professional エディションのすべてのツールが提供されるわけではないので、最初のうちは統合型リソース エディターがないことに不便に感じるかもしれません。このためビットマップやアイコン ファイルの編集には、外部のエディターを使用する必要があります (Windows 7 のペイントが使えます)。

MSDN Web サイトからの Visual Studio のダウンロード

Visual C++ 2010 Express は、次のアドレスから Web ダウンロード ツールを使って無料で入手できます。

https://www.microsoft.com/japan/msdn/vstudio/express/

ダウンロードが終わったらセットアップ ツール (図 1) を実行し、使用許諾契約に同意した後、オプションのコンポーネントをダウンロードするかどうかを選択します。Hilo ではオプションのコンポーネント (Silverlight または SQL Server 2010 Express) は不要なので、これらのオプションを選択解除すれば、ダウンロードとインストールを迅速に実行できます (図 2)。

図 1 Web ダウンロードとインストール用のアプリケーション

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図 2 ダウンロードのオプション

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次に、アプリケーションのインストール先を指定します (既定のインストール先を使用してください)。すると、進行状況ダイアログ (図 3) にコンポーネントのダウンロードとインストールの状況が表示されます。目安として、Visual C++ の最小インストールでは 146 MB のデータがダウンロードされます。

図 3 Visual C++ 2010 Express のダウンロード

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Hilo アプリケーションは SQL Server を使用しませんが、Visual C++ 2010 によって SQL Server Compact エディションが自動でダウンロードされインストールされます。SQL Server は、Visual C++ 2010 が C++ プログラム データベース (旧バージョンの Visual Studio では、コードの IntelliSense データを保存するための .ncbファイル) の作成に使用する個別の製品です。

Visual C++ Express エディションの登録

Visual C++ 2010 Express はインストール後 30 日間にわたって使用できます。この日数が過ぎるとトライアルの有効期限が切れます。それ以降も製品を使い続けるには、登録が必要です。[ヘルプ] メニューに登録用のオプションが用意されています (図 4)。

図 4 Visual C++ 2010 Express の登録用コマンド

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このメニュー コマンドを選択すると、図 5 に示す登録ダイアログが表示されます。

図 5 Visual C++ 2010 Express の登録

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[オンラインで登録キーを取得する] というボタンをクリックすると、マイクロソフト Web サイトの登録ページがブラウザーで表示されます。登録キーを取得するには、事前に Windows Live ID を使用してログオンする必要があります (Windows Live ID の取得には、最小限の詳細情報の登録が必要です)。すると、Web サイトから登録キーが返されます。

図 6 登録キーの取得

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このキーをコピーして登録ダイアログ (図 5) の [登録キー] ボックスにペーストし、[今すぐ登録] ボタンをクリックします。登録が終わると、製品の有効期限が解除されます。

ヘルプの使用

開発環境で最も重要な部分の 1 つは、ヘルプ システムです。Visual C++ 2010 には、ローカルとオンラインの 2 種類のヘルプ ドキュメントがあります。どちらも [ヘルプ] メニューの [ヘルプ設定の管理] で設定します (図 7)。

図 7 ヘルプ ドキュメント ソースの管理

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このコマンドを初めて実行するとき、ローカル ヘルプ システムの場所を質問されます (図 8)。[OK] をクリックして、提案された値をそのまま使用してください。

図 8 ヘルプ ライブラリ マネージャーの起動

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次に、実際のヘルプ ライブラリ マネージャーが表示されます (図 9)。

図 9 ヘルプ ライブラリ マネージャーの実行

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Visual Studio 2010 ヘルプはブラウザー ベースですが、ヘルプ データをローカルでインストールするか、Web ベースにするかを選ぶ必要があります。オンライン ヘルプ システムを使用するオプションを選択すると、ヘルプを直ちに使用できます。オンライン システムの利点は、コミュニティ コンテンツ セクションが各ページに用意され、オンライン コミュニティのメンバーが投稿した役立つコメントを参照できる場合がある点です。また、自分が発見したヒントを追加することもできます。

ローカルのヘルプ システムの場合は、コミュニティのメリットを活用することはできませんが、自分のコンピューターにインストールされるので、ネットワークに接続しなくてもヘルプを利用できます。ローカル ヘルプを使用する場合は、事前にインストールする必要があります。ヘルプ コンテンツは関連する API のライブラリとして提供されます。このコンテンツをダウンロードしてインストールするには、ヘルプ ライブラリ マネージャーのオプション [オンラインからコンテンツをインストール] を使用します。このオプションを選択すると、マネージャーはまず Web から使用可能なコンテンツを検索し、ヘルプ トピックをテーブル形式で一覧表示します。各ヘルプ トピックの横には、[アクション] 列の [追加] リンクがあります (図 10)。

図 10 オンラインからドキュメントをインストール

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Visual C++ Express に関係するヘルプ トピックは次のとおりです。

  • Visual Studio C++
  • Visual Studio (すべて)
  • Visual Studio Fundamentals
  • Win32 and COM Development

1 つ以上のトピックを選択した後、[更新] ボタンをクリックしてドキュメントをダウンロードしインストールすることができます。このプロセスはやや時間がかかるので (上記のすべてのライブラリを選んだ場合、約 1 GB がダウンロードされます)、休憩をとっていただくと良いかもしれません。残念ながらマネージャーは、必要なディスク領域について警告することなくダウンロードを開始します。したがって最終的なドキュメントと中間ファイルに必要なスペースを考慮し、数ギガバイトの空き領域があることを確認しておく必要があります。ドキュメントがインストールされた旨のメッセージが表示されたら、[終了] をクリックしてマネージャーのメイン ダイアログを閉じます。

ローカルにインストールしたヘルプ システムを初めて使用するとき、Visual C++ 2010 はヘルプ ライブラリ エージェントを起動します。このエージェントはコンピューターのポート 47873 で動作する簡素な HTTP サーバーです。Visual C++ 2010 で F1 キーを押して特定の機能またはキーワードに関するヘルプを取得すると、ヘルプ システムは Web ページを判別し、ポート 47873 のループバック アドレスで該当するファイルへの URL を作成します。次にヘルプ ライブラリ エージェントは、圧縮されたヘルプ ファイルの中から該当するページを検索し、登録済みのブラウザーに返します。

オンライン ヘルプとローカル ヘルプは、コミュニティ コンテンツ セクションの有無以外に違いはありません。どちらのヘルプ システムでも検索ボックスが用意され、(参照の補助手段として) 使用可能なヘルプがツリー形式で表示されます。

Windows 7 SDK のインストール

Windows SDK for Windows 7 をインストールする方法は 2 通りあります。Web ツールを使用するか、または DVD の ISO イメージをダウンロードし、その DVD から SDK をインストールします。DVD ISO イメージには SDK 全体が含まれていますが、インストール時にどの項目をインストールするかを選択できます。Web ツールも ISO イメージも、マイクロソフトのダウンロード サイトから入手可能です。

Web ツールの名前は winsdk_web.exe であり、初期的なダウンロード サイズは 492 K です。ダウンロード サイトから入手可能な ISO イメージには、x86 32 ビット、AMD64 64 ビット、Itanium 64 ビット開発用の 3 種類があります。Visual C++ 2010 の Express エディションで使用可能なのは 32 ビット版だけですが、Visual C++ をインストールするプラットフォームに対応する SDK のバージョンをインストールする必要があります。ISO ファイルのサイズは約 1.5 GB です。

DVD を書き込んだ後、DVD のルート フォルダーにある setup.exe ファイルを実行するとインストールが開始されます。別の方法として、Web ツール winsdk_web.exe を実行することもできます。どちらのツールもユーザー インターフェイスは同じであり、図 11 に示す導入ページから始まります。

図 11 Windows SDK のインストール プログラム

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この後のページでは、使用許諾契約への同意が求められ、その後 SDK のインストール先を質問されます。既定のインストール先をそのまま使用してください。その次のページでは、インストール可能な項目の一覧が表示されます (図 12)。

図 12 Windows 7 SDK のインストール オプション

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このツールでは、選択したオプションに必要なディスク領域が表示されます。Web ツールを使用する場合、ダウンロード データの容量も概算で表示されます。フル インストールの場合は 4.5 GB のディスク領域が必要であり、ダウンロードされるデータは 2.5 GB です。十分なディスク領域があり、DVD からインストールする場合は、SDK 全体をインストールすることができます。ディスク領域が限られている場合、または Web からダウンロードする場合、インストールすべき最低限の項目は、Development ToolsWindows Development Tools セクションの Win32 Development Tools です。Win32 Development Tools に必要なディスク領域は、約 42 MB です。

インストール オプションを選択して [次へ] ボタンをクリックすると、選択した項目のダウンロード、展開、インストールが Setup プログラムによって開始されます (図 13)。

図 13 SDK のインストール

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Setup プログラムの終了後、コンピューターを再起動してインストールを完了する必要があります。Visual C++ 2010 は使用する検索パスに自動的に SDK ツールのパスを追加するので、C++ プロジェクトを変更する必要はありません。

Visual C++ 2010 で使用される Web ブラウザー ベースのシステムとは異なり、SDK は Microsoft Document Explorer を使用してヘルプを表示します。Microsoft Document Explorer は Visual C++ の旧バージョンで使用されていたヘルプ システムですが、Visual C++ 2010 開発環境には統合されていません。

Visual Studio の構成

Visual C++ 2010 Express 環境の設定は、すべて変更可能です。そのため、自分の好みや会社のコーディング基準に合わせて環境を構成することができます。主な構成にアクセスするには、[ツール] メニューの [オプション] メニュー項目を使用します。このオプション ダイアログは、次の表に示す 5 つのカテゴリで構成されています。

カテゴリ

説明

環境

統合開発環境の全般的なオプション。使用するフォント、キーボード ショートカット、スタートアップ オプションなど。

プロジェクトおよびソリューション

ソリューションの一般的な保存場所、プロジェクトのビルド方法と実行タイミング、C++ プロジェクト ファイルの拡張子などに関する情報。

テキスト エディター

タブのサイズ、タブ文字のスペースを使用するかどうかのオプションや、コードのインデントに関するオプションなど。

デバッグ

デバッガーの動作に関する一般的なオプション、エディット コンティニュを有効にするかどうか、シンボル ファイルの場所など。

非常に多くのオプションがあるので、ここではすべてのオプションに関する詳しい説明は省略します。ただし、開発者のニーズは個人によって異なるため、不便を感じないように開発環境をカスタマイズするのは重要なことです。そのため、よく使われる設定について以下に説明します。

フォントの変更

[環境] カテゴリには [フォントおよび色] というサブカテゴリがあります (図 14)。

図 14 コード エディターのフォントを変更するための構成ページ

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このページから、設計環境内の各ツール ウィンドウや関連ウィンドウで使用されるフォントを変更することができます。また、フォントのサイズや種類も自分が使いやすいものを選ぶことができます。開発作業ではほとんどの時間がテキストを読むことに費やされるので、おそらくこれが最も重要な構成設定となります。

キーボード ショートカットの変更

[環境] カテゴリには [キーボード] というサブカテゴリがあります (図 15)。

図 15 キーボード ショートカットを変更するための構成ページ

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このページでは、開発環境でコマンドの実行に使用するキーボード ショートカット キーを指定することができます。リスト ボックスに表示されているコマンドは、メニュー項目です。特定のコマンドを変更するには、 [ショートカット キー] テキスト ボックスをクリックし、適切なキーの組み合わせを押します。キーの組み合わせが既に使用されている場合は、その旨が通知され、そのキーの組み合わせをそのコマンドに割り当てるよう選択することができます。

別の開発環境を主に使っている開発者は、Visual C++ 2010 Express の既定とは異なるキーボード ショートカットを使い慣れている可能性があります。このようにキーボード ショートカットを変更できるようになっているので、新しいキーの組み合わせを学習しなくても、すぐに Visual C++ の使用を始められます。

コード エディター設定の変更

コードの書式設定は個人的な好みの問題でもあり、場合によっては会社のポリシーでもあります。そのため、書式設定の変更方法を知っておくことが重要です。図 16 は、[テキスト エディター] カテゴリの画面で、C++ コードのタブやインデントを変更する場合に使用します。

図 16 テキスト エディターのタブ オプション

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図 17 コード エディターの詳細オプション

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[詳細] オプションは、コードの参照を可能にするために作成されるデータベースに関するオプションです (図 17)。

たとえば、[ソリューションの再スキャンの間隔] (既定では 60 分) は、ソリューションを再スキャンしてデータベースを更新する頻度を表します。ブラウザー データベースには、プロジェクト内のクラスおよびグローバル関数についての情報が含まれています。この情報は、クラス ビュー、コード ウィンドウの一番上のナビゲーション バー、そして [定義へ移動]、[宣言へ移動]、[すべての参照の検索] などの検索メニュー項目によって使用されます。Visual C++ Express では、こういったコード ブラウザー情報の保存に SQL Server Compact データベース (拡張子 sdf) が使用されるので、データベースという用語が比喩的にも文字通りの意味でも使われています。

その他の設定の変更

クラス ビューは、Visual C++ の旧バージョンでは標準のツール ウィンドウですが、Visual C++ 2010 Express を起動すると、一見した限りではクラス ビューがなくなったように見えます。実際にはなくなったわけではなく、クラス ビューは引き続き提供されていますが、上級者モードで環境を使用する必要があります。図 18 は、上級者モードを選択するためのメニュー項目を示しています。[ツール] メニュー、[設定] サブメニューの順にクリックして、[上級者用の設定] を選択するとクラス ビューが表示されます。非表示にするには、[基本設定] を選択します。

図 18 上級者モードを選択するためのメニュー設定

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[上級者用の設定] を選択すると、クラス ビューが表示されるだけでなく、プロパティ マネージャーなど他の項目も有効になり、拡張機能マネージャーを有効にするためのメニュー項目が表示され、MSIL Disassembler や Ildasm (マネージ プロジェクト用)、Error Lookup ユーティリティなど、外部のツールへのアクセスが可能になります。プロパティ マネージャーを使用すると、プロジェクト間でプロジェクト構成を共有することができます。一方、拡張機能マネージャーを使用すると、インストール済みの拡張機能を利用したり、マイクロソフトのオンライン ギャラリーを参照して拡張機能をダウンロードすることができます。

Hilo ソリューションのインストール

Hilo Browser ソリューションは、MSDN コード ギャラリー (英語) から ZIP アーカイブとして入手できます。ダウンロード ページで希望するコードのリンクをクリックし、使用許諾契約書に同意すると、ZIP ファイルがハードディスクにダウンロードされます。ダウンロードが完了したら、ハードディスク上のフォルダー (例: Documents\My Documents\Visual Studio 2010\Projects library) にアーカイブの内容を解凍します。ソリューション フォルダーの Hilo.sln ファイルをダブルクリックすると、Visual C++ 2010 Express が起動され、ソリューションが読み込まれます。プロジェクトが読み込まれるたびにセキュリティ ダイアログが表示される可能性がありますが、[OK] をクリックしてプロジェクトの読み込みを続行してください。

プロジェクトが読み込まれると、ウィンドウの一番下に "インクルード ファイルを解析しています” というステータス メッセージが表示されます。これは環境がソリューション内のファイルをスキャンし、ブラウザー データベースを作成しているためです。スキャンが完了すると、クラス ビューや [すべての参照の検索] コンテキスト メニュー項目などのツールを使用することができます。

ソリューションをビルドするには、[ビルド] メニュー、[ソリューションのビルド] メニュー項目の順にクリックします。ビルド操作の結果は、[出力] ツール ウィンドウに表示されます。Visual C++ 2010 Express と Hilo ソリューションのインストールが正常に行われていれば、エラーや警告なしでソリューションがビルドされるはずです。ただし、Visual C++ 2010 Express を使用する場合、x64 ビルドに関する警告が表示されます。Visual C++ 2010 Express は 64 ビット プロジェクトをサポートしていないからです。この警告は無視して構いません。

アプリケーションをテストするには、[デバッグ] メニュー、[デバッグなしで開始] の順にクリックします。Hilo Browser アプリケーションが起動され、Windows 7 の [画像] ライブラリの内容が表示されます。ここでアプリケーションの操作を試してみてください。カルーセルを回転させてサブフォルダーを表示し、特定のフォルダーをタッチ (マウスの場合はクリック) して開き、画像を表示します。ひととおり機能を試し終わったら、Hilo Browser を閉じます。

Hilo プロジェクトの検証

Visual C++ 2010 プロジェクトは、プロジェクト ファイル、リソース ファイル、およびコード ファイルで構成されています。ソリューション エクスプローラーの標準の表示では、コードおよびリソース ファイルはヘッダー ファイルリソース ファイルソース ファイルの分類で表示されます。図 19 はソリューション エクスプローラーの画面ですが、ソリューション エクスプローラーの各フォルダーは、このプロジェクトのディスク フォルダーを反映していません。開発者は必要に応じて任意のフォルダーを作成できます。フォルダー間でファイルを移動しても、ファイルが保存される場所に影響はありません。

図 19 Visual C++ 2010 Express のソリューション エクスプローラー

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リソース ファイルとしては、アイコン ファイル、ビットマップ、およびリソース コンパイラ スクリプト ファイル (.rc ファイル) などの項目があります。Visual C++ の Express エディションにはリソース エディターが付属していません。そのため、実行可能ファイルにバインドされるリソースを変更するには、リソース スクリプトを手動で編集する必要があります。それには、ソリューション エクスプローラーでリソース スクリプトを右クリックし、[コードの表示] をクリックします。ビットマップやアイコンなど、それ以外のリソースを編集するには、外部のツールが必要です。ソリューション エクスプローラーで目的とする項目をダブルクリックすると、その種類のファイルを開くために Windows に登録されているエディターが Visual C++ 2010 Express によって起動されます。

ディスク上では、Hilo Browser プロジェクトはソリューション フォルダーのサブフォルダーです。ヘッダー、ソース コード ファイル、リソース ファイルは、このフォルダーに保存されています。Browser プロジェクト フォルダーには、プロジェクト ファイル (.vcxproj)、フィルター ファイル (.vcxproj.filters)、およびユーザー設定ファイル (.vcxproj.user) も含まれています。

Visual C++ 2010 は MSBuild ビルド ツールを使用します。.vcxproj ファイルは、ビルド内のターゲット、コンパイラ、そしてコンパイラが使用するリンカー オプションをリストします。プロジェクト ディレクトリでコマンド ラインから MSBuild ユーティリティを実行すると、このユーティリティは自動的に .vcxproj ファイルを読み込み、その中で指定されているターゲットをビルドします。

.vcxproj.filters ファイルは、すべてのターゲットとソリューション エクスプローラー内でそれらが存在するフォルダーをリストします。このファイルはソリューション エクスプローラーによってのみ使用され、ビルドの一部分としては使用されません。同様に、.vcxproj.user ファイルには現在のユーザーのユーザー インターフェイス情報が含まれています。

Visual C++ Express で初めてソリューションを開いた時点で、環境はソース ファイルを解析し、コード ブラウザー データベース (.sdf ファイル) を生成します。また、開発者がコードを入力するときに IntelliSense 情報を提供する目的で使用される、IntelliSense プリコンパイル済みヘッダー ファイルを含む ipch というフォルダーも生成します。つまり、ソリューションを配布する予定の場合、絶対に含める必要のある最低限のファイルは、コードおよびリソース ファイル、.sln ファイル、およびプロジェクト ファイル (.vcxproj と .vcxproj.filters) だけです。その他のファイルはすべて、存在しない場合には Visual C++ によって生成されます。

プロジェクト オプションの変更

.vcxproj ファイル内のオプションを編集するには、ソリューション エクスプローラーのプロパティ ページを使用します。それには、ソリューション エクスプローラーでプロジェクト エントリを右クリックし (ソリューションではなくプロジェクトをクリックするよう注意してください)、コンテキスト メニューから [プロパティ] を選択します。一連のプロパティ ページは、ツール、ビルド イベント、デバッグ関連のページに分類されています。図 20 は、プロジェクトのプロパティ ページです。

図 20 プロジェクトの構成プロパティ ページ

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プロジェクトのビルドに使用する主要ツールは、C/C++ コンパイラ、リンカーマニフェスト ツール、およびリソース コンパイラのリソースの 4 つのカテゴリのいずれか 1 つです。すべてのケースで、1 つ以上のプロパティ ページを使用して個々のオプションを変更することができます。また、コマンド ライン ページでは、使用したいオプションに対応するコマンド ライン スイッチを入力できます。プロジェクトのプロパティで設定したビルド ツール値は、すべてのソース ファイルに適用されます。特定のファイルに限って特定のオプションを適用するには、そのファイルのプロパティ ページを使用する必要があります。

ビルド ツール オプションに加えて、ビルド イベントおよびデバッグのプロパティ ページもあります。また、VC++ ディレクトリというプロパティ ページでは、現在のプロジェクトのインクルード フォルダー、ライブラリ フォルダー、実行可能フォルダーに対応する追加の検索フォルダーを提供することができます。

ソリューションのデバッグ

Visual C++ 2010 Express でのソリューションのデバッグは非常に簡単です。まず、ソリューションが確実にデバッグ情報付きでビルドされるようにします。それには、[標準] ツール バー (図 21) で [デバッグ] ビルド オプションが選択されていることを確認したうえで、ソリューションをリビルドします。

図 22 [デバッグ] ビルド オプションの選択

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ブレークポイントは簡単に設定できます。ブレークポイントを設定する行をクリックし、[デバッグ] メニューの [ブレークポイントの設定/解除] をクリックします。行の左側のインジケーター マージンに赤いブレークポイント グリフが表示されます (図 22)。インジケーター マージンをクリックしてブレークポイントを設定/解除することもできます。

図 22 コード エディターでのブレークポイントの設定/解除

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ブレークポイントを設定した後、[デバッグ] メニューの [デバッグ開始] オプションをクリックしてデバッグを開始できます。ブレークポイントに達すると、デバッガーはその位置で一時停止し (図 23)、ブレークポイントの上に黄色の矢印グリフを表示します。

図 23 Hilo Browser のデバッグ

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他にもいくつかの新しいツール ウィンドウが表示されます。[自動変数] ウィンドウは現在のコード行にある変数の値を表示します。[ローカル] ウィンドウは現在のスコープにあるすべての変数を表示します。変数がオブジェクト インスタンスへのポインターである場合、そのエントリを展開してオブジェクトのメンバーの値を表示することができます。これらの変数ウィンドウのいずれかを使用して、変数の値を変更することもできます。

アプリケーションをデバッガーの制御下で実行するとき、[デバッグ] ツール バーが表示されます (このツール バーは図 23 の一番上に示されています)。このツール バーを使用して、デバッグ動作を制御することができます。次のブレークポイントまでのアプリケーションの実行、またアプリケーションの停止、シングル ステップが可能です。シングル ステップを選択する場合、現在の実行ポイントの関数にステップ インしたり、その関数を 1 つの動作としてステップ オーバーしたり、さらに、現在の関数を 1 つの動作としてステップ アウトしたりできます。

まとめ

以上で開発環境のセットアップ、および Hilo Browser アプリケーションのコンパイルと実行が完了し、コードを詳しく検証していくための準備が整いました。次の記事では、Hilo Browser アプリケーションの開発に使用されたテクノロジについて説明します。

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