Windows Media エンコーダのリモート制御

Bill Birney
Microsoft Corporation

December 2000

概要 : この記事では、Windows Media エンコーダ 7 に含まれるリモート管理サンプルのセットアップと使用方法の概要を紹介します。

目次

はじめに システム要件 リモート アドミニストレータ サンプルの動作 リモート アドミニストレータのセットアップ リモート アドミニストレータの使用

はじめに

Microsoft® Windows Media™ エンコーダ 7 の新しい機能の 1 つに、リモート管理と呼ばれるものがあります。この機能を使用すると、ネットワークを介してほかのコンピュータからエンコーダを制御、構成、監視できます。たとえば、複数のエンコード用コンピュータは騒がしいマシン ルームに置いておき、自分の静かなオフィスから制御することができます。リモート管理機能を使用するとさまざまなことを実行できます。たとえば、LAN、ダイヤルアップ接続、またはインターネットを介してエンコーダを制御するソリューションを作成できます。

リモート管理ソリューションの作成には Windows Media エンコーダ ソフトウェア開発キット (SDK) を使用します。SDK を見ると、Microsoft Visual Basic® と C++ を使用したプログラムの開発方法、および Microsoft Visual Basic Scripting Edition (VBScript) や JScript® といった、Web ページで使用できるスクリプト言語を使用したプログラムの開発方法がわかります。リモート管理のほかに、SDK では、エンコーダとともに使用するプログラムを開発するための、エンコーダの強力なアプリケーション プログラミング インターフェイス (API) の使用方法もわかります。API は COM オートメーションを使用して公開されます。COM オートメーションによって、Windows Media エンコーダを COM を使ってローカルに制御するプログラム、または分散 COM (DCOM) を使ってネットワークを介して制御するプログラムを開発できます。

Windows Media エンコーダ 7 をインストールすると、リモート管理サンプルもインストールされます。このサンプルを使用すると、SDK や特別なプログラミングの知識がなくてもリモート管理システムをセットアップすることができます。サンプルでは 1 つまたは複数のリモート コンピュータ上にあるエンコーダを Web ページを使って制御しています。単に Microsoft Internet Explorer を使って Web ページを開き、そのページを使ってエンコーダに接続して制御するだけです。

この記事では、サンプルのセットアップと使用方法に関する概要と、以下の内容について説明しています。

システム要件 リモート アドミニストレータ サンプルの動作 リモート アドミニストレータのセットアップ リモート アドミニストレータの使用

サンプルの使用方法とエンコード方法の詳細については、Windows Media エンコーダ 7 のヘルプを参照してください。ユーザ設定リモート管理ソリューションの作成方法の詳細については、Windows Media エンコーダ SDK を参照してください。Windows Media エンコーダおよび Windows Media エンコーダ SDK は Windows Media の Web サイトからダウンロードできます。

システム要件

このセクションでは、リモート アドミニストレータのサンプルを実行するために必要なソフトウェアおよびハードウェアについて説明します。

リモート管理では、エンコードするコンピュータ、管理 Web ページをホストする Web サーバー、およびリモート管理を行うクライアント コンピュータとして機能する 1 つまたは複数のコンピュータが必要となります。Web サーバーとエンコーダは 1 台のコンピュータで兼ねることもできますが、エンコードには多大な処理能力が必要となることに注意してください。これら 2 つを 1 台のコンピュータで実行する場合、Web サーバーは管理 Web ページのホストのみに使用してください。

すべてのコンピュータは TCP/IP プロトコルを使用するネットワークを介して接続する必要があります。これは Web ベースのネットワークに使用する標準プロトコルです。

エンコードするコンピュータ

  • Windows Media エンコーダ 7 を実行するための基本要件のほかに、エンコードするコンピュータには、DCOM が適切に構成されている必要があります。DCOM はサポート対象の Microsoft Windows オペレーティング システムに含まれています。DCOM を正しく構成する方法については、Windows Media エンコーダのヘルプを参照してください。

Web サーバー

  • Microsoft Internet Information Services (IIS) を実行している Microsoft Windows NT® Server または Windows® 2000 Server。
  • Windows Media エンコーダ 7。Web サーバー コンピュータ上でエンコーダを実行しない場合でも、リモート管理を実行する際にサーバー側でエンコーダのコンポーネントのいくつかが必要となります。

クライアント

  • Microsoft Internet Explorer バージョン 5 以上。

  • Internet Explorer 5 をサポートする Microsoft Windows オペレーティング システム。

    Windows Media エンコーダをクライアントにインストールする必要はありません。

リモート アドミニストレータ サンプルの動作

エンコーダは Automation API を介して、Active Server Pages (ASP) に含まれるスクリプトによって構成および制御されます。クライアント コンピュータ上のブラウザは、まず Web サーバーに接続し、リモート アドミニストレータ Web ページを開きます。その後 Web サーバーはエンコード用のコンピュータとの接続を確立するため、ユーザーによって提供された情報を使用して ASP ページのスクリプトを実行します。

Web サーバーとリモート エンコーダの間に接続が確立された後、コマンドがエンコーダに送信され、エンコーダからの情報が Web サーバーを介してクライアントに返送されます。ユーザーは開始や停止といったエンコード コマンドを送信したり、エンコーディング プロファイル名やアーカイブ ファイルの名前とパスといった構成情報を送信したりできます。エンコーダからは、エンコーダへのクライアント接続数やエンコードの進行時間といった構成情報およびステータス情報が送信されます。複数のエンコーダとの間に接続を確立でき、それらすべてを 1 つのページから管理することができます。

ASP は動的でインタラクティブな Web サーバー アプリケーションを作成するためのサーバー側のスクリプト環境です。ASP ページはユーザーの入力内容に応じて簡単に情報を変更できるようにリモート アドミニストレータで使用されます。サーバー側スクリプトのもう 1 つの利点は、クライアント コンピュータ側での作業がほとんど必要なくなることです。たとえば、ラップトップ コンピュータからモデム接続を介してエンコーダをリモートで管理することもできるようになります。

リモート アドミニストレータは Web ベースのサンプルとして提供されるため、ニーズに合わせて簡単にカスタマイズできます。 ASP ページやその他の Web ページは Microsoft メモ帳などの簡単なテキスト エディタや、より洗練されたスクリプト環境である Microsoft FrontPage® などで開くことができます。ASP スクリプトの知識をお持ちの方なら、ページを修正したり、スクリプトをコピーして独自のページに貼り付けることができます。たとえば、エンコーダ管理をサーバー ファームの管理に使用される大規模な Web サイトに統合することもできます。特定のコンピュータ群を監視するためだけにアドミニストレータを使用する場合は、新しいコンピュータに接続する際に使用されるスクリプトとページを削除することで、大変単純なページにすることができます。また、Visual Basic や C++ を使用してアドミニストレータ プログラムを作成することもできます。リモート アドミニストレータのサンプルをインストールした後、Windows Media エンコーダの SDK を見て、ニーズに合わせたソリューションのカスタマイズ方法を検討されることをお勧めします。

リモート アドミニストレータのセットアップ

以下の図に、エンコード用のコンピュータが 3 台ある場合の典型的な構成を示します。

図 1. エンコード用コンピュータ 3 台による典型的な構成

以下にサンプルのセットアップ手順を示します。

  1. エンコード用コンピュータとして使用する 1 台または複数のコンピュータに Windows Media エンコーダをインストールします。
  2. Web サーバーとして使用するコンピュータに IIS がインストールされていることを確認します。
  3. Web サーバーに Windows Media エンコーダをインストールします。エンコーダをインストールすると、リモート管理サンプル ファイルが\Program Files\Windows Media Components\Encoder\RemAdmin ディレクトリにコピーされます。
  4. Web サーバー上で、\Wwwroot の下のディレクトリにリモート管理サンプル ファイルをコピーするか、または標準のインストール パスをポイントする仮想ディレクトリを作成します。IIS のセットアップの詳細については、Windows Media エンコーダのヘルプを参照してください。
  5. エンコード用のコンピュータ上で DCOM を構成します。Web サーバーおよびクライアント上では DCOM を構成する必要はありません。DCOM の構成の詳細については、Windows Media エンコーダのヘルプを参照してください。

DCOM が適切に構成されていないと、リモート管理サンプルは機能しません。

リモート アドミニストレータの使用

クライアント上で Internet Explorer を開き、Web サーバーにある Machine.htm Web ページの URL を入力します。リモート アドミニストレータの Web ファイルが格納されている \Wwwroot の下のディレクトリが RemAdmin という名前なら、http://MyServer/RemAdmin/Machine.htm のような URL を入力します。

エンコーダの追加

Machine.htm が開いたら、アドミニストレータに 1 つまたは複数のエンコーダを追加できます。エンコーダを追加する方法は 3 つあります。

既存のエンコーダに接続する

エンコード用コンピュータで Windows Media エンコーダをローカルで開き、その後アドミニストレータを使用してエンコーダをリモート制御することができます。 コンピュータ名を入力してリモート アドミニストレータ上で [OK] をクリックするとクライアントが接続され、リモート エンコーダが開いているというステータスが表示されます。

リモート エンコーダを作成してセッション ファイルを読み込む

エンコーダが実行されていない場合は、[新しいエンコーダ][読み込み] ボタンが含まれたページが開きます。[読み込み] をクリックし、.wme ファイル拡張子を持つセッション ファイルのパスと名前を入力してください。 パスは、c:\MyWMEs\MySession.wme のような、エンコード用コンピュータへの物理的な相対パスか、または \\MyServer\MyWMEs\MySession.wme のような UNC パスでなければなりません。

リモート エンコーダを作成および構成する

セッション ファイルを使用したくない場合は、[新しいエンコーダ] をクリックして、以下の 5 つのタブで設定を行ってください。

  • **名前。**作成するエンコーダの名前です。これはエンコード用コンピュータの名前である必要はありません。たとえば複数のエンコーダを同じエンコード用コンピュータ上で実行できます。コンピュータの名前が EncMachine の場合、そのコンピュータ上に、EncMach1、EncMach2、EncMach3 という名前の 3 つのエンコーダを作成できます。エンコーダの複数のインスタンスがキャプチャ カードを共有することはできません。また能力の高い CPU を必要とします。
  • ソース。 [新規作成] をクリックし、リストを使用してオーディオおよびビデオのキャプチャ カードを選択するか、またはソース ファイルのパスを入力します。AVI のファイルとパスを入力した場合、[ビデオ][オーディオ] の両方にパスを追加する必要があります。ソースの名前も入力する必要があります。また、ライブ ストリームのアーカイブ ファイルを作成するかどうか選択できます。
  • アドミニストレータを使用すると、1 つのエンコーダに複数のソースを追加し、エンコード中に切り替えることができます。ほかのソースを追加するには、[新規作成] をもう一度クリックし、次のソースの情報を入力します。
  • **表示情報。**Windows Media Player に表示されるテキスト情報を入力します。
  • **プロファイル。**リストから、エンコーディング プロファイルを選択します。リストには、エンコード用コンピュータに存在するプロファイルが含まれています。特定のコンピュータ上でユーザー設定プロファイルを作成した場合はリストに表示されます。
  • 出力。ブロードキャスト ストリームをエンコードする場合は、[エンコードされた出力をブロードキャスト配信する] チェック ボックスをクリックして、HTTP ポート番号を入力します。ブロードキャスト ストリームでファイルをエンコードする場合は、[ファイルに保存] チェック ボックスをクリックして、エンコード用コンピュータのパスを入力します。

1 つのエンコーダの追加が完了したら、同じ手順を繰り返して、引き続き同じコンピュータ上にエンコーダを追加できます。新しいエンコーダの構成ページで [OK] をクリックすると、エンコーダが作成され、リモート アドミニストレータのメイン ページが開きます。

DCOM がエンコーダを作成できない、または見つけられない場合は、"オブジェクトが必要です" というエラーメッセージが表示されます。クライアントがエンコーダ オブジェクトを作成できない場合は、エンコード用コンピュータ上のリモート管理を使用することはできません。エンコード用コンピュータ上で DCOM が適切に構成され正しく動作していることと、ネットワークが機能していることを確認してください。また、エンコード用コンピュータを再起動して、ブラウザの表示を更新するか、またはいったん閉じて再度開いてみてください。

エンコーダの制御

リモート アドミニストレータのメイン ページには以下のコントロールがあります。

  • エンコーダ コントロール。エンコーダの開始と停止、およびオーディオ ストリームのミュートが実行できます。このセクションでは、[新規作成] をクリックして新しいエンコーダを追加したり、[読み込み] をクリックして、既存のセッション ファイルを使用して新しいエンコーダを追加したり、[エンコーダの削除] をクリックしてエンコーダを削除したりできます。

    エンコーダは実行されていなくてもコンピュータのリソースを消費します。エンコーダを使用しない場合は、リモート アドミニストレータのメイン ページにあるリストから選択し、[エンコーダの削除] をクリックしてください。これでエンコーダがリストから削除されるだけでなく、エンコード用コンピュータ上のエンコーダも閉じられます。

  • アーカイブ コントロール。アーカイブ ファイルのエンコードを開始、停止、および一時停止できます。アーカイブ ファイルを手動で制御するには、[手動] をクリックし、[パス] をクリックして、アーカイブ ファイルを作成するエンコード用コンピュータのパスを入力します。

  • **エンコーダの変更。**別のエンコーダにコントロールを切り替えるには、リスト内のエンコーダ名をクリックします。

  • **ソースの切り替え。**エンコーダの入力ソースを切り替えるには、リスト内のソース名をクリックします。

このページにはエンコーダからのフィードバックも表示されます。各種の情報を表示するには、[モニタ] セクションにある以下のタブをクリックしてください。

  • **全般。**ソースおよび出力の設定、エンコードの進行状況、現在の帯域幅、現在の 1 秒あたりのフレーム数、および選択したエンコーディング プロファイルを表示します。
  • **表示情報。**テキスト プロパティを表示します。
  • **ストリーム情報。**各ストリームの現在の帯域幅、およびビデオ ストリームの 1 秒あたりのフレーム数を表示します。複数帯域幅のストリームをエンコードしている場合は、各ストリームの状態を表示することができます。