コマンド ボタンとリンクの比較
従来、コマンド ボタンは操作を開始するために使われ、一方でリンクは他の場所に移動するために使われていました。ウェブの普及に伴いリンクの用途が広がり、コマンドの開始やオプションの選択にも使用されるようになってきました。どのコマンドにコマンド ボタンを使うか、またはリンクを使うかをここで検討します。アフォーダンスの概念や、主コマンドと副コマンドの違いに着目すると、いくつかのガイドラインが浮かび上がります。
アフォーダンス
コマンド ボタンは、アフォーダンスという点において優れています。押すことができそうな外観になっているので、ユーザーは自然に使い方がわかります。これに対し、リンクはアフォーダンスの面で劣り、経験に頼ることになります。また、アンダーラインやシステム標準のリンク色がないと、普通のテキストと同じように見えます。リンクとして動作することを確認するには、コンテキストやマウス カーソルをリンクの上に置くほかありません。
アフォーダンスや見つけやすさの点で劣る場合、積極的に利用しない方がよいように思えますが、ドロップダウン メニューやコンテキスト メニューなど、操作を起動する他のしくみにも同じような問題があることを忘れてはなりません。特定のオブジェクトについて、ユーザーは関連するコマンドをメニュー バーから探したり、コンテキスト メニューを見つけるため右クリックしてみることがあります。しかもメニューの見た目は、使い方を示すようなものではないので、経験から学ぶしかありません。一方で、個々のメニュー項目に使い方を示すアフォーダンスは必要ありません。メニューは全体として使い方を示しているからです。したがって、関連するコマンドのメニューが見つかれば、どのように操作するかががわかります。
この例では、コマンドのメニューとしてリンクが使われています。メニューのコンテキストでわかるため、コマンド ボタンのようなアフォーダンスが不要です。
主コマンドか副コマンドか
主コマンドとは、ウィンドウの主たる目的のために必要なコマンドのことです。たとえば、[印刷] ダイアログ ボックスでは、"印刷"** が主コマンドになります。コマンド ボタンを使用すると、主コマンドであることがユーザーにはっきりわかります。副コマンドは、そのウィンドウの目的の本質ではないが、役に立つ場合のある周辺的な操作です。たとえば、[印刷] ダイアログ ボックスでは、"プリンターの検索"、"プリンターのインストール" が副コマンドです。副コマンドには、あまり強調されないようにリンクを使用することを検討します。
情報収集か関連ウィンドウの表示か
情報入力を求めたり、タスクをすぐに選択するための、ウィンドウを表示することが目的の場合は、コマンド ボタンを使います。このような操作は、コマンドに似た感じがあります。これに対し、関連はあっても独立するウィンドウを表示するのであれば、リンクを使うことができます。このような操作には、移動のような印象を受けるからです。
したがって、[開く]、[保存]、[参照] などのコマンドについては、副コマンドであっても、リンクではなくコマンド ボタンを使用します。使い分けに迷う場合は、モーダル ウィンドウを表示するのであればコマンド ボタンを、独立したウィンドウであればリンクを使用してください。
元の状態に戻せなくなる操作か、いつでも元に戻れる移動か
ユーザーはリンクを見ると、ウェブのページ移動を思い浮かべます。安全性レベルに関してもウェブと同様に考えます。つまり、ブラウザーでは、ユーザーはいつでも [戻る] ボタンを使って元に戻ることができます。さらに、ブラウジングの際、重要な確認のほとんどは、リンクではなくコマンド ボタンを使って行います。
このように予測に合わせるため、リスクのある操作や元の状態に戻せない操作など、重要な結果を伴うコマンドにはリンクを使いません。同様に、ウィザードやタスク フローでは、確定にはコマンド ボタンを使用し、リンクは選択や次の手順への移動に使うようにします。
ラベルの長さ
単純に言うと、コマンド ボタンの枠が大きすぎると不自然で目障りになってしまいます。コマンド ボタンのラベルを短く (通常は 4 ワード以下) すると外観がよくなります。画面要素が重ならないように、主コマンドのラベルはできるだけ簡潔にします。
ガイドライン
- 次の場合には、コマンド ボタンを使用します。
- 主コマンド。
- 副コマンドであっても、情報収集や選択を行うために使用するウィンドウを表示する場合。
- リスクのある操作または元の状態に戻せない操作、ウィザードやページ フローにおける操作の確定。
- リンクは、他のページやウィンドウ、ヘルプ トピックに移動するため、または定義の表示やコマンド メニューに使います。
- 副コマンドはあまり強調されないよう、リンクを使用することを検討します。
- コマンド ボタンのラベルは 4 ワード (全角で約 12 文字) 以下の短いものを使用します。リンクはラベルがそれより長くてもかまいません。