Visual Studio 2005 Team System

Microsoft IT に関するメモ

発行日 : 2005 年 8 月 19 日


Microsoft® Visual Studio® 2005 は、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にわたってコミュニケーションとコラボレーションを向上させることにより、ソフトウェア開発チームを支援する生産 性、統合性、および拡張性に優れた統合開発支援スイートです。


はじめに

Visual Studio チームと Microsoft Information Technology (Microsoft IT) チームが Microsoft 社内ネットワークに Visual Studio 2005 Team System を導入した主な目的は 2 つあります。Microsoft IT 内にある開発チームのソース管理とワーク アイテム (作業項目) トラッキングを集中化することと、開発プロジェクトのライフサイクルを標準化することです。

利点

これまで、Microsoft 社内の各製品チームは個別にソース管理を行ってきたため、社内中に数多くの開発ツールとバグ追跡システムが存在していました。このようなシステムは、特定用途向けのツールと手法の寄せ集めであり、Microsoft の運用チームが標準的な方法で会社をサポートすることは困難でした。

Visual Studio 2005 Team System を導入することで、運用チームは、考えられる最善のサービスの提供と、Microsoft Business Unit (製品チーム) の IT 開発チームの支援を行うことができます。運用上の利点に加え、Visual Studio 2005 Team System のソリューションと開発の手法は、Business Unit のIT チームをまたがって開発ライフサイクルを標準化する手段を提供します。

Visual Studio 2005 Team System では、ソフトウェア ビルドの統合により、複数のチームに跨るプロジェクトをビルドするための一貫性のある手段を提供します。さらに、統合ソース管理によって、ソース コード ストレージを集中化する完全なソリューションを提供します。また、開発プロセス (メソドロジ) のカスタマイズ機能により、Microsoft IT チームは、現在使用している開発プロセスを Visual Studio 2005 Team System へ、開発チームメンバーの役割、ワーク アイテムの種類、チェックイン ポリシーを最適化した形で統合することができます。ワーク アイテム の追跡機能 (トラッキング) 、ソース管理、およびビルドの自動化の統合によって、開発チームはこれまで得ることが難しかったプロジェクトに関する多くのレポートを得ることができるよ うになり、新たな洞察を得ることができます。例えば、カスタマイズしたビューでは、コード チャーン (コードの追加、更新等の統計的情報) からバグ傾向までを日々のビルド レポートで確認できます。

ソリューション

Microsoft IT においてアプリケーション開発グループを支援する中心的な IT チームが、Visual Studio 2005 Team System のプレリリース バージョンを配置し、ホストしました。このチームのノウハウが、分散アプリケーションの配置および運用デザインを検証する際に鍵となりました。

このチームは、3 人のサポート アナリストと 1 人のプログラム マネージャで構成されており、Microsoft データ センターの厳格なセキュリティと稼動時間の基準を忠実に守りながら、データ センターに Visual Studio 2005 Team System の複数のインストールを配置しました。

このチームは、6 つの独立したチーム ―ある小規模なチームでは 5 名程度、またVisual Studio 2005 Team System の開発チームでは約 400 名のユーザー― についてユーザーを管理できるように配置を設計しました。IT ホストのサービスは、これらのチームにソース管理、ワーク アイテム トラッキング、ビルドの自動化、Office 統合など、Visual Studio 2005 Team System の完全な機能セットを提供しました。

配置のアーキテクチャ

ユーザー数が非常に多い環境で、Visual Studio 2005 Team System 用に推奨されるアーキテクチャは、アプリケーション層 (tier) とデータ層を物理的に別々のハードウェア上に配置する構成です (図 1 では それぞれ「VSTSアプリケーション層」、「TFS データ層」として図示しています。“TFS” は “Team Foundation Server” の略です。アプリケーション層とデータ層は共に Team System においてサーバー機能を提供する Team Foundation Server に含まれる機能です)。 開発担当者は、ソース管理、ビルドの自動化、Microsoft Windows® SharePoint® Services、およびワーク アイテム トラッキングなどの機能に、アプリケーション層と対話可能なクライアント機能を持つ Visual Studioを通じてアクセスします (図 1 では 「VSTS Team Foundation Client」と図示しています。これは通常、Visual Studio 2005 Team Suite、あるいは Team Edition for Software Architects、Developers、Testers いずれかになります)。

アプリケーション層がホストする Visual Studio 2005 Team System の機能セットには、ポート 80 (既定) を使用し、Web サービスを介してアクセスします。 残りのポートはセキュリティのために制限されます。さらに、Windows SharePoint Services サイトおよび Microsoft SQL Server™ Reporting Services サイトにアクセスするには、ポート 80 での Hypertext Transfer Protocol (HTTP) アクセスが必要です。ワーク アイテム、添付ファイル、ソース管理のデータはすべて、データ層の SQL Server 2005 データベースに格納されます。

アプリケーション層とデータ層は、標準的な Structured Query Language (SQL) ポートの 1433 を介して通信し、アクセス許可と認証は、個々のユーザー アカウントとセキュリティ グループを組み合わせたドメイン認証によって制御されます。
現在の Microsoft の配置では、図 1 に示すように、データ層で SQL Server Reporting Services をホストしています。今後は、2 つの層の間でさらにアクセスの制限と機能の分離を進め、製品リリースによってアプリケーション層でホストされる SQL Server Reporting Services を呼び出すようにする計画です。

Visual Studio 2005 Team System 配置のアーキテクチャ
図 1. Visual Studio 2005 Team System 配置のアーキテクチャ

ハードウェアの要件

Visual Studio 2005 Team System の大規模な配置はこれが最初であり、ハードウェアのガイドラインが完成していなかったため、配置チームでは類似する Microsoft の社内プロジェクト管理ツールとソース管理ツールのノウハウを利用してハードウェア要件を決定しました。配置チームでは、予測できないパフォーマンス上の問題 (これはベータ製品にはつきものですが) と将来のシステムの拡大も考慮に入れています。

配置の際にチームが選択したハードウェアを以下の表に示します。

表 1. ビジネス グループ IT ハードウェア

コンピュータ CPU ハード ディスク メモリ
アプリケーション層 HP DL 580 Dual Xeon HT プロセッサ、
3.6 ギガヘルツ (GHz)
記憶域
ネットワーク
(SAN)
3.5 ギガバイト (GB)
データ層 HP DL 585  クワッドプロセッサ、
2.2 GHz
SAN 16 GB


表 2 は、最近発表された、ハードウェアの推奨事項です。 ハードウェアの選択は Beta 2 の推奨事項に準拠しています。

表 2. Visual Studio 2005 Team System (Team Foundation Server) の Beta 2 の推奨ハードウェア

構成 CPU ハード ディスク メモリ
1 サーバー、
20 ユーザー未満
アプリケーションおよび
データ層のサーバー
シングル プロセッサ、
2.2 GHz
8 GB 1 GB
1 サーバー、
20 ~ 100 ユーザー
アプリケーションおよび
データ層のサーバー
デュアル プロセッサ、
2.2 GHz
30 GB 2 GB
2 サーバー、
100 ~ 250 ユーザー
アプリケーション層サーバー シングル プロセッサ、
2.2 GHz
20 GB 1 GB
2 サーバー、
100 ~ 250 ユーザー
データ層サーバー デュアル プロセッサ、
2.2 GHz
80 GB 2 GB
2 サーバー、
250 ~ 500 ユーザー
アプリケーション層サーバー デュアル プロセッサ、
2.2 GHz
40 GB 2 GB
2 サーバー、
250 ~ 500 ユーザー
データ層サーバー  クワッドプロセッサ、
2.2 GHz
150 GB 4 GB


表 2 に示すように、複数層に配置する構成でそれぞれの Visual Studio 2005 Team System インストールがサポートするユーザーの最大数は 500 ユーザーです。予測されるユーザー数により、同じ構成の 2 つの Visual Studio 2005 Team System インストールを配置しました。具体的には Team System の1 つのインストールで Visual Studio 2005 Team System 開発チームの 400 ユーザーを、もう 1 つで Microsoft IT の残り 5 チームをサポートしました。

パフォーマンス

配置後、ユーザー数が増加しても、アーキテクチャまたはハードウェアのアップグレードは必要ありませんでした。図 2 は、2004 年 8 月以降、ワーク アイテムを割り当てられたユーザー数とワークスペースの数の増加を示しています。

2. ワークアイテムを割り当てられたユーザー数とワークスペース数
図 2. ワークアイテムを割り当てられたユーザー数とワークスペース数

図 3 は、対応するファイルとワーク アイテムのアクティビティの増加を示しています。

図 3. ファイルとワーク アイテムのアクティビティ
図 3. ファイルとワーク アイテムのアクティビティ

Visual Studio 2005 Team System の開発チーム メンバーによる利用状況を、7 日間にわたって計測しました。この期間に、照会されたワーク アイテム数は 11,758件、更新されたワーク アイテム数は 11,454件、開かれたワーク アイテム数は 56,337件 でした。さらに、ソース管理の取得が 22,190 件、チェックイン 289 件、シェルブ (Shelve) 372 件、ダウンロード 3,600,000 件、アップロード 73,843 件でした。

配置後の期間を通じて、Microsoft の運用基準である 99.9 パーセントの稼動時間を維持しながら、システムの各数値は表 3 で示すように計測されました。

表 3. ワーク アイテムとバージョン管理の統計値

ワーク アイテム バージョン管理
ワーク アイテム数 33,626 ファイル数 271,766
カスケード スタイル シート ノード数 1,709 フォルダ数 30,376
ワーク アイテムのバージョン数 242,327 ワークスペース数 612
添付ファイル数 8,014 圧縮された合計
ファイル サイズ
10.3 GB
照会回数 2,619 N/A N/A

冗長性とバックアップ

現在のシステムは、障害発生時にオンラインにできるアプリケーション層のウォーム スタンバイに対応していますが、データ層では標準的な SQL Server 2005 冗長性のオプションがサポートされます。

Visual Studio 2005 Team System では、ソース管理、ワーク アイテム トラッキング、プロセス ガイド、プログラム管理に関連するすべてのデータを SQL Server データベースに格納します。これにより、Microsoft の運用では、最初にデータベースの完全バックアップをディスクに取得し、次にアーカイブのためにテープに移すことによって、複数チームのプロジェクトを同時にバックアップできます。

詳細情報

Visual Studio 2005 Team System の詳細については、以下のサイトを参照してください。

https://msdn.microsoft.com/teamsystem/ (英語)
https://www.microsoft.com/japan/msdn/teamsystem/ (日本語)


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ドキュメントの説明

このメモでは、Microsoft IT にかかわる特定のトピックを簡潔に、かつ技術的に深く掘り下げます。この内容は通常、既にある IT Showcase のドキュメントに関連しています。Microsoft IT が特定の運用タスクを遂行する手順や、ハードウェア デバイスまたはソフトウェア アプリケーションを構成する方法などについて説明します。また、最適な実践の詳細情報や Microsoft IT での運用に関して問い合わせの多い情報を紹介することもあります。

対象読者

IT の実装担当者は、このドキュメントを利用して、Microsoft IT が Visual Studio 2005 のプレリリース バージョンに基づいて開発チーム向けに Visual Studio 2005 Team System をセットアップした方法を知ることができます。アーキテクチャ、ハードウェア、および構成の詳細では例を挙げ、プレリリース版の問題と、対応する回避策を明らかにします。

ユーザーコメント

「問題 (issue)、解決方法、そしてテストを対象となるコードと結び付け、連携できるので、追跡にかかる時間や開発作業に関連する時間を節約できたんだ。」

Gaylon Blank
Microsoft IT 開発リーダー
Microsoft Corporation

 

「Microsoft IT が目指すものの 1 つに、すべてのグループのソース管理を集中化し、Microsoft IT の全チームにまたがるプロジェクト ライフサイクルの標準的なプロセス (メソドロジ) を作成するというものがあります。今回の Team System の導入はこの目標に到達するための第 1 歩になりました。」

Barbara Yamauchi
シニア プログラム マネージャ
MSIT VS2005 Program
Microsoft Corporation

 

「ワーク アイテムの追跡機能、ソース管理、そしてビルドの自動化機能が統合されたおかげで、チームはチェックインのたびにコード ベースがどれほど影響を受けるかについて把握できるようになりました。」

Diana Kumar
プログラム マネージャ
Visual Studio Team
Microsoft Corporation

 

「Team System ではソース管理、ワーク アイテム、プロジェクトに関連するその他の情報をすべて、データ層の SQL Server データベースに保持しています。このおかげで、システム全体のバックアップ計画は非常に単純なものになりました。」

Dennis Minium
リード プログラム マネージャ
Visual Studio Product Team
Microsoft Corporation