ドライバーの展開およびテストのためのコンピューターのプロビジョニング (WDK 8)

ターゲット コンピューターやテスト コンピューターのプロビジョニングは、自動ドライバー展開、テスト、デバッグ用にコンピューターを構成するプロセスです。コンピューターをプロビジョニングするには、Microsoft Visual Studio を使います。

  Windows Driver Kit (WDK) 8 は、Windows Driver Kit (WDK) の最新バージョンではありません。WDK の最新バージョンを入手し、ここで説明するプロビジョニングの手順に従ってターゲット コンピューターをプロビジョニングすることをお勧めします。

テスト環境とデバッグ環境には、ホスト コンピューターターゲット コンピューターという、2 台のコンピューターがあります。ターゲット コンピューターはテスト コンピューターとも呼ばれます。ドライバーの開発とビルドは、ホスト コンピューター上の Visual Studio で行います。デバッガーはホスト コンピューター上で実行され、Visual Studio のユーザー インターフェイスで使用されます。ドライバーのテストとデバッグを行うときは、ドライバーをターゲット コンピューター上で実行します。

ターゲット コンピューターのプロビジョニングの準備

ターゲット コンピューターを準備する手順は、コンピューターがネットワーク ドメインに参加しているか、ワークグループに参加しているかによって異なります。

  ターゲット コンピューターでドライバー テスト機能を実行するときに、BitLocker を有効にしておくことはお勧めできません。有効になっていると、再起動するたびに Bitlocker キーの再入力が必要になります。

ホストとターゲットがネットワーク ドメインに参加している場合:

  1. ターゲット コンピューターには、ドライバーの実行とテストに使うオペレーティング システムをインストールします。ホスト コンピューターと同じネットワーク ドメインに、ターゲット コンピューターを参加させます。

      ターゲット コンピューターをホスト コンピューターと同じドメインに参加させることができない場合も、ターゲット コンピューターをプロビジョニングできます。ターゲット コンピューターで管理者アカウントを有効にします。詳しくは、「ホストとターゲットがワークグループに参加している場合」をご覧ください。ホスト コンピューターでプロビジョニング ウィザードを起動したときに、ターゲット コンピューターの管理者アカウントの資格情報を入力します。

  2. ターゲット コンピューターで、[コントロール パネル]、[ネットワークとインターネット]、[ネットワークと共有センター] の順に選択します。 [アクティブなネットワークの表示] で、アクティブなネットワークの種類が [ドメイン] であることを確認します。

      ターゲット コンピューターに ARM プロセッサが使われている場合は、「ターゲット コンピューターのプロセッサが ARM である場合の注意点」をご覧ください。

  3. ターゲット コンピューターで、[コントロール パネル]、[ネットワークとインターネット]、[ネットワークと共有センター]、[共有の詳細設定の変更] の順に選択します。ネットワークの種類 ([プライベート][ドメイン][ゲストまたはパブリック] など) の一覧が表示されます。[ドメイン] を展開します。[ネットワーク探索を有効にする][ファイルとプリンターの共有を有効にする] を選びます。

      ターゲット コンピューターで Windows Server を実行している場合は、「ターゲット コンピューターで Windows Server を実行しているときの注意点」をご覧ください。

  4. ターゲット コンピューターで BitLocker が有効になっている場合は、無効にします。BitLocker の有効化と無効化について詳しくは、「BitLocker ドライブ暗号化でファイルを保護する」をご覧ください。

  5. x86 または x64 ターゲット コンピューターでセキュア ブートが有効になっている場合は無効にします。Unified Extensible Firmware Interface (UEFI) とセキュア ブートについては、UEFI ファームウェアに関するページをご覧ください。

    ターゲット コンピューターが ARM プロセッサを使っている場合は、Windows デバッグ ポリシーをインストールします。これを実行できるのは、Microsoft またはターゲット コンピューターの製造元だけです。セキュア ブートを無効にする必要はありません。

ホストとターゲットがワークグループに参加している場合:

  1. ターゲット コンピューターには、ドライバーの実行とテストに使うオペレーティング システムをインストールします。ホスト コンピューターと同じワークグループに、ターゲット コンピューターを参加させます。

  2. ターゲット コンピューターで Administrator アカウントを有効にします (まだ有効になっていない場合)。[コントロール パネル]、[システムとセキュリティ]、[管理ツール]、[コンピューターの管理] の順に選択します。[ローカル ユーザーとグループ]、[ユーザー] の順に選択し、[Administrator] をダブルクリックします。[アカウントを無効にする] チェック ボックスをオフにします。

  3. ターゲット コンピューターで、Administrator としてサインインします。Administrator のパスワードが現在空白である場合は、Administrator アカウントのパスワードを作ります。Ctrl + Alt + Del キーを押し、[パスワードの変更] を選びます。

  4. ターゲット コンピューターで、[コントロール パネル]、[ネットワークとインターネット]、[ネットワークと共有センター] の順に選択します。 [アクティブなネットワークの表示] で、アクティブなネットワークの種類 ([プライベート] または [パブリック]) を確認します。

      ターゲット コンピューターに ARM プロセッサが使われている場合は、「ターゲット コンピューターのプロセッサが ARM である場合の注意点」をご覧ください。

  5. ターゲット コンピューターで、[コントロール パネル]、[ネットワークとインターネット]、[ネットワークと共有センター]、[共有の詳細設定の変更] の順に選択します。ネットワークの種類 ([プライベート][ドメイン][ゲストまたはパブリック] など) の一覧が表示されます。ネットワークの種類 ([プライベート] または [パブリック]) と一致する見出しを展開します。[ネットワーク探索を有効にする][ファイルとプリンターの共有を有効にする] を選びます。

      ターゲット コンピューターで Windows Server を実行している場合は、「ターゲット コンピューターで Windows Server を実行しているときの注意点」をご覧ください。

  6. ターゲット コンピューターに Administrator としてサインインしていることを確認します。

      他のユーザーとしてサインインしたのでは、管理者特権を持っていても不十分です。Administrator としてサインインしてください。

  7. ターゲット コンピューターで BitLocker が有効になっている場合は、無効にします。BitLocker の有効化と無効化について詳しくは、「BitLocker ドライブ暗号化でファイルを保護する」をご覧ください。

  8. x86 または x64 ターゲット コンピューターでセキュア ブートが有効になっている場合は無効にします。Unified Extensible Firmware Interface (UEFI) とセキュア ブートについては、UEFI ファームウェアに関するページをご覧ください。

    ターゲット コンピューターが ARM プロセッサを使っている場合は、Windows デバッグ ポリシーをインストールします。これを実行できるのは、Microsoft またはターゲット コンピューターの製造元だけです。セキュア ブートを無効にする必要はありません。

  9. ホスト コンピューターとターゲット コンピューターが互いに ping できることを確認します。コマンド プロンプト ウィンドウを開き、「ping ComputerName」と入力します。

  10. ホスト コンピューターとターゲット コンピューターが異なるサブネットにある場合、ホスト コンピューターとターゲット コンピューターが通信できるように一部のファイアウォール設定の調整が必要になることがあります。次の手順に従います。

    1. ターゲット コンピューターのコントロール パネルで、[ネットワークとインターネット]、[ネットワークと共有センター] の順に選択します。アクティブなネットワークに注目します。これは、パブリック ネットワークプライベート ネットワークのどちらかです。
    2. ターゲット コンピューターのコントロール パネルで、[システムとセキュリティ]、[Windows ファイアウォール]、[詳細設定]、[受信の規則] の順に選択します。
    3. 受信の規則の一覧で、アクティブなネットワークのネットワーク探索の規則をすべて特定します。(例: [プロファイル][プライベート] になっているネットワーク探索の規則をすべて特定します)。それらの規則ごとに、規則をダブルクリックし、[スコープ] タブを開きます。[リモート IP アドレス] の下で、[任意の IP アドレス] を選択します。
    4. 受信の規則の一覧で、アクティブなファイルとプリンターの共有の規則をすべて特定します。それらの規則ごとに、規則をダブルクリックし、[スコープ] タブを開きます。[リモート IP アドレス] で、[任意の IP アドレス] をクリックします。

ターゲット コンピューターのプロビジョニング

ターゲット コンピューターを準備したら、ホスト コンピューター上の Visual Studio でターゲット コンピューターをプロビジョニングできます。

  1. ホスト コンピューター上の Visual Studio の [ドライバー] メニューで、[Test] (テスト)、[Configure Computers] (コンピューターの構成) の順にクリックします。

    [Add new computer] (新しいコンピューターの追加) をクリックします。

  2. [Computer name] (コンピューター名) にターゲット コンピューターの名前を入力します。[Provision computer and choose debugger settings] (コンピューターをプロビジョニングし、デバッガーの設定を選択する) をクリックします。

    コンピューターの構成に関するダイアログ ボックスのスクリーン ショット

    [Next] (次へ) をクリックします。

  3. お使いになるデバッグ接続の種類を選び、必要なパラメーターを入力します。この例では、接続の種類として [Serial] (シリアル) を選びます。ここでは、ホスト コンピューターについては com5、ターゲット コンピューターについては com1 を使うように指定します。

    デバッグの構成に関するダイアログ ボックスのスクリーン ショット

    さまざまな種類の接続に対するデバッグのセットアップについて詳しくは、CHM ファイルまたは Windows のデバッグ ツールに関するページにあるオンライン ドキュメントで、Visual Studio でのカーネル モード デバッグの設定に関するページをご覧ください。

  4. プロビジョニング プロセスには数分かかり、ターゲット コンピューターが自動的に 1 回か 2 回、再起動されます。プロビジョニングが完了したら、[Finish] (完了) をクリックします。

  コンピューターがワークグループに参加している場合は、通常、ターゲット コンピューターにアクセスするための資格情報の入力を求められます。「TargetComputerName\Administrator」 (TargetComputerName はターゲット コンピューターの名前) と入力します。ターゲット コンピューターの Administrator アカウントのパスワードを入力します。

  ネットワーク デバッグを使っていて、ホスト コンピューターとターゲット コンピューターがルーターを介して接続されている場合は、両方のコンピューターのネットワーク アダプターが IP アドレスを動的ホスト構成プロトコル (DHCP) サーバーから取得していることを確認します。ターゲット コンピューター上でドライバーをデバッグしているカーネルは、デバッグに使われているネットワーク アダプターのルーティング可能な IP アドレスを取得するために、DHCP を使おうとします。ドライバーは、DHCP が割り当てるアドレスを取得できない場合、プライベート IP アドレスの自動割り当て (APIPA) を使ってローカル リンク IP アドレスを取得します。ローカル リンク IP アドレスはルーティング可能でないため、ホストとターゲットはルーターを介した通信をローカル リンク IP アドレスで行うことはできません。ホスト コンピューターとターゲット コンピューターが同じネットワーク ハブまたはスイッチに接続されている場合は、ネットワーク デバッグにローカル リンク IP アドレスを使うことができます。

プロビジョニング後のデバッグ

ターゲット コンピューターのプロビジョニングが済んだら、ホスト コンピューター上の Visual Studio からカーネル モード デバッグ セッションを確立できます。詳しくは、「Visual Studio を使ったカーネル モード デバッグの実行」をご覧ください。ターゲット コンピューター上のユーザー モード プロセスも、ホスト コンピューター上の Visual Studio からデバッグできます。詳しくは、「Visual Studio を使ったユーザー モード プロセスのデバッグ」をご覧ください。

  

個別のホスト コンピューターとターゲット コンピューターを使っている場合は、Visual Studio と WDK をターゲット コンピューターにインストールしないでください。Visual Studio と WDK がターゲット コンピューターにインストールされている場合、デバッグはサポートされません。

ターゲット コンピューターで Windows Server を実行しているときの注意点

ターゲット コンピューターで Windows Server を実行している場合は、ネットワーク探索を有効にする前に次のサービスを有効にしてください。

  • 機能探索リソース公開
  • SSDP 探索
  • UPnP デバイス ホスト

ターゲット コンピューターのプロセッサが ARM である場合の注意点

お使いのターゲット コンピューターに ARM プロセッサが搭載されている場合、ファイルとプリンターの共有を有効にしてください。管理者特権のコマンド プロンプト ウィンドウを開き、次のコマンドを入力します。

sc.exe config lanmanserver start=auto
sc.exe start lanmanserver
netsh.exe advfirewall firewall set rule group="File and Printer Sharing" new enable=Yes

関連トピック

ドライバーの開発、テスト、および展開

コンピューターのプロビジョニングで実行される処理 (WDK 8.0)