チュートリアル: C# で Windows フォーム コントロールから継承する

C# では、"継承" を使用することで強力なカスタム コントロールを作成できます。 継承を使用すると、標準の Windows フォーム コントロールの固有の機能をすべて保持しながら、カスタム機能も組み込んだコントロールを作成できます。 このチュートリアルでは、ValueButton という単純な継承されたコントロールを作成します。 このボタンは、Windows フォームの標準の Button コントロールから機能を継承し、ButtonValue というカスタム プロパティを公開します。

プロジェクトの作成

新しいプロジェクトを作成するときは、ルート名前空間、アセンブリ名、プロジェクト名を設定し、既定のコンポーネントが適切な名前空間に含まれるようにするために、プロジェクトの名前を指定します。

ValueButtonLib コントロール ライブラリと ValueButton コントロールを作成するには

  1. Visual Studio で、新しい Windows フォーム コントロール ライブラリ プロジェクトを作成し、ValueButtonLib という名前を設定します。

    プロジェクト名 ValueButtonLib は、既定でルート名前空間にも割り当てられます。 ルート名前空間は、アセンブリ内のコンポーネント名の修飾に使用されます。 たとえば、ValueButton という名前のコンポーネントが 2 つのアセンブリに含まれている場合、ValueButtonLib.ValueButton を使用して目的の ValueButton コンポーネントを指定できます。 詳細については、「名前空間」を参照してください。

  2. ソリューション エクスプローラーで、[UserControl1.cs] を右クリックし、ショートカット メニューの [名前の変更] をクリックします。 ファイル名を ValueButton.cs に変更します。 コード要素 "UserControl1" へのすべての参照の名前を変更するかどうかをたずねられたら、[はい] をクリックします。

  3. ソリューション エクスプローラーで、[ValueButton.cs] を右クリックし、[コードの表示] をクリックします。

  4. class ステートメント行の public partial class ValueButton を見つけ、このコントロールの継承元の型を UserControl から Button に変更します。 これにより、継承されたコントロールは Button コントロールのすべての機能を継承できます。

  5. ソリューション エクスプローラーで、[ValueButton.cs] ノードを開いて、デザイナーによって生成されたコード ファイル (ValueButton.Designer.cs) を表示します。 このファイルをコード エディターで開きます。

  6. InitializeComponent メソッドを見つけ、AutoScaleMode プロパティを割り当てる行を削除します。 このプロパティは、Button コントロールには存在しません。

  7. [ファイル] メニューの [すべて保存] をクリックして、プロジェクトを保存します。

    注意

    ビジュアル デザイナーは使用できなくなっています。 Button コントロールにより独自の描画が行われるため、デザイナーでコントロールの外観を変更することはできません。 コントロールのビジュアル表現は、コードで変更しない限り、継承元のクラス (つまり、Button) とまったく同じになります。 UI 要素のないコンポーネントをデザイン サーフェイスに追加することは可能です。

継承されたコントロールにプロパティを追加する

継承された Windows フォーム コントロールの考えられる用途の 1 つとして、外観は標準の Windows フォーム コントロールと同じでありながら、カスタム プロパティを公開するコントロールの作成があります。 このセクションでは、ButtonValue というプロパティをコントロールに追加します。

Value プロパティを追加するには

  1. ソリューション エクスプローラーで、[ValueButton.cs] を右クリックし、ショートカット メニューの [コードの表示] をクリックします。

  2. class ステートメントを探します。 { の直後に次のコードを入力します。

    // Creates the private variable that will store the value of your
    // property.
    private int varValue;
    // Declares the property.
    public int ButtonValue
    {
       // Sets the method for retrieving the value of your property.
       get
       {
          return varValue;
       }
       // Sets the method for setting the value of your property.
       set
       {
          varValue = value;
       }
    }
    

    このコードでは、ButtonValue プロパティを格納し、取得するメソッドを設定しています。 get ステートメントは、返された値を varValue プライベート変数に格納されている値に設定します。set ステートメントは、value キーワードを使用してプライベート変数の値を設定します。

  3. [ファイル] メニューの [すべて保存] をクリックして、プロジェクトを保存します。

コントロールをテストする

コントロールはスタンドアロン プロジェクトではないため、コンテナー内でホストする必要があります。 コントロールをテストするには、コントロールを実行するテスト プロジェクトを指定する必要があります。 また、コントロールをビルド (コンパイル) して、テスト プロジェクトからアクセスできるようにする必要があります。 このセクションでは、コントロールをビルドし、Windows フォームでテストします。

コントロールをビルドするには

[ビルド] メニューの [ソリューションのビルド] をクリックします。 コンパイル エラーも警告も発生せずに、ビルドが正常に完了します。

テスト プロジェクトを作成するには

  1. [ファイル] メニューの [追加] をポイントし、[新しいプロジェクト] をクリックして [新しいプロジェクトの追加] ダイアログ ボックスを開きます。

  2. [Visual C#] ノードの下の [Windows] ノードを選択し、[Windows フォーム アプリケーション] をクリックします。

  3. [名前] ボックスに「Test」と入力します。

  4. ソリューション エクスプローラーで、テスト プロジェクトの [参照設定] ノードを右クリックし、ショートカット メニューの [参照の追加] をクリックして [参照の追加] ダイアログ ボックスを表示します。

  5. [プロジェクト] というラベルのタブをクリックします。 [プロジェクト名] に ValueButtonLib プロジェクトが表示されます。 プロジェクトをダブルクリックして、テスト プロジェクトへの参照を追加します。

  6. ソリューション エクスプローラーで、[Test] を右クリックし、[ビルド] をクリックします。

コントロールをフォームに追加するには

  1. ソリューション エクスプローラーで、[Form1.cs] を右クリックし、ショートカット メニューの [デザイナーの表示] をクリックします。

  2. ツールボックス[ValueButtonLib コンポーネント] を選択します。 [ValueButton] をダブルクリックします。

    ValueButton がフォームに表示されます。

  3. [ValueButton] を右クリックし、ショートカット メニューの [プロパティ] をクリックします。

  4. [プロパティ] ウィンドウで、このコントロールのプロパティを調べます。 プロパティは、追加のプロパティである ButtonValue がある点を除き、標準ボタンで公開されるプロパティと同じです。

  5. ButtonValue プロパティを 5 に設定します。

  6. ツールボックス[すべての Windows フォーム] タブで、 [Label] をダブルクリックして Label コントロールをフォームに追加します。

  7. ラベルをフォームの中央に配置し直します。

  8. valueButton1 をダブルクリックします。

    コード エディターが開き、valueButton1_Click イベントが表示されます。

  9. 次のコード行を挿入します。

    label1.Text = valueButton1.ButtonValue.ToString();
    
  10. ソリューション エクスプローラーで、[Test] を右クリックし、ショートカット メニューの [スタートアップ プロジェクトに設定] をクリックします。

  11. [デバッグ] メニューの [デバッグの開始] をクリックします。

    Form1 が表示されます。

  12. [valueButton1] をクリックします。

    label1 に数字の "5" が表示されます。これは、継承されたコントロールの ButtonValue プロパティが、valueButton1_Click メソッドによって label1 に渡されたことを示しています。 このようにして、ValueButton コントロールは標準の Windows フォーム ボタンの機能をすべて継承しながら、追加のカスタム プロパティを公開します。

関連項目