テーブル値パラメータ (データベース エンジン)

テーブル値パラメータは、SQL Server 2008 の新しいパラメータの型です。テーブル値パラメータは、ユーザー定義テーブル型を使用して宣言されます。テーブル値パラメータを使用すると、一時テーブルまたは多数のパラメータを作成せずに、ストアド プロシージャや関数などの Transact-SQL ステートメントまたはルーチンに複数行のデータを送信できます。

テーブル値パラメータは OLE DB や ODBC のパラメータ配列に似ていますが、より柔軟性が高く、Transact-SQL との統合も緊密です。テーブル値パラメータには、セットベースの操作に使用できるという利点もあります。

注意注意

Transact-SQL では、入力データのコピーが作成されないようにするために、テーブル値パラメータがルーチンに参照渡しされます。

テーブル値パラメータを使用して Transact-SQL ルーチンを作成して実行し、Transact-SQL コード、および任意のマネージ言語のマネージ クライアントとネイティブ クライアントから呼び出すことができます。

Transact-SQL でのテーブル値パラメータの作成および使用

テーブル値パラメータには、SQL Server の型とその型を参照するパラメータの 2 つの主要コンポーネントがあります。テーブル値パラメータを作成して使用するには、次の手順を実行します。

  1. テーブル型を作成してテーブル構造を定義します。

    SQL Server の型を作成する方法の詳細については、「ユーザー定義テーブル型」を参照してください。テーブル構造を定義する方法の詳細については、「CREATE TABLE (Transact-SQL)」を参照してください。

  2. テーブル型のパラメータを含むルーチンを宣言します。SQL Server ルーチンの詳細については、「CREATE PROCEDURE (Transact-SQL)」および「CREATE FUNCTION (Transact-SQL)」を参照してください。

  3. テーブル型の変数を宣言してテーブル型を参照します。変数を宣言する方法の詳細については、「DECLARE @local\_variable (Transact-SQL)」を参照してください。

  4. INSERT ステートメントを使用してテーブル変数を入力します。データを挿入する方法の詳細については、「INSERT と SELECT を使用した行の追加」を参照してください。

  5. テーブル変数を作成して入力したら、変数をルーチンに渡すことができます。

    ルーチンの有効範囲が失われると、テーブル値パラメータは使用できなくなります。型定義は削除されるまで残ります。

SQL Server Native Client でテーブル値パラメータを使用するには、「テーブル値パラメータ (SQL Server Native Client)」を参照してください。

ADO.NET でテーブル値パラメータを使用するには、ADO.NET のドキュメントを参照してください。

利点

テーブル値パラメータは柔軟性が高く、一時テーブルやその他の方法でパラメータの一覧を渡す場合よりもパフォーマンスが向上することもあります。テーブル値パラメータには、次の利点があります。

  • クライアントからのデータを最初に設定する際にロックを取得しません。

  • 単純なプログラミング モデルを提供します。

  • 複雑なビジネス ロジックを 1 つのルーチンに含めることができます。

  • サーバーへのラウンド トリップが減少します。

  • 基数が異なるテーブル構造を含めることができます。

  • 厳密に型指定されます。

  • クライアントで並べ替え順序と一意キーを指定できます。

制限

テーブル値パラメータには、次の制限があります。

  • SQL Server でテーブル値パラメータの列の統計が保持されません。

  • テーブル値パラメータは、READONLY 入力パラメータとして Transact-SQL ルーチンに渡す必要があります。ルーチン本体でテーブル値パラメータに対して UPDATE、DELETE、INSERT などの DML 操作を実行することはできません。

  • SELECT INTO または INSERT EXEC ステートメントの対象としてテーブル値パラメータを使用することはできません。テーブル値パラメータは、SELECT INTO の FROM 句か、INSERT EXEC 文字列またはストアド プロシージャに含めることができます。

スコープ

テーブル値パラメータの対象範囲はストアド プロシージャ、関数、または動的な Transact-SQL テキストで、他のパラメータと同じです。同様に、テーブル型の変数の対象範囲も、DECLARE ステートメントを使用して作成される他のローカル変数と同じです。テーブル値変数は、動的な Transact-SQL ステートメント内で宣言でき、テーブル値パラメータとしてストアド プロシージャおよび関数に渡すことができます。

セキュリティ

テーブル値パラメータの権限は、CREATE、GRANT、DENY、ALTER、CONTROL、TAKE OWNERSHIP、REFERENCES、EXECUTE、VIEW DEFINITION、および REVOKE の Transact-SQL キーワードを使用することで、SQL Server のオブジェクト セキュリティ モデルに従います。

カタログ ビュー

テーブル値パラメータに関連付けられている情報を取得するには、sys.parameters (Transact-SQL)sys.types (Transact-SQL)、および sys.table_types (Transact-SQL) のカタログ ビューに対してクエリを実行します。

テーブル値パラメータと BULK INSERT 操作

テーブル値パラメータの使用はセットベースの変数を使用するその他の方法に似ていますが、多くの場合、大規模なデータセットを処理するときは、テーブル値パラメータを使用する方が短時間で済みます。テーブル値パラメータよりもスタートアップ コストがかかる一括操作と比較すると、1,000 行未満の行を挿入する場合は、テーブル値パラメータの方がパフォーマンスが高くなります。

再利用されるテーブル値パラメータの場合、一時テーブル キャッシュを使用するとメリットがあります。このテーブル キャッシュを使用すると、同等の BULK INSERT 操作よりもスケーラビリティが向上します。少数の行の挿入操作では、BULK INSERT 操作またはテーブル値パラメータではなく、パラメータ一覧またはバッチにまとめられたステートメントを使用すると、パフォーマンス上の利点が多少得られる場合があります。ただし、これらの方法はプログラミングが容易ではなく、行が増えるとすぐにパフォーマンスが低下します。

テーブル値パラメータは、同等のパラメータ配列の実装と同様またはそれ以上のパフォーマンスを実現します。

次の表に、使用を推奨するテクノロジを挿入操作の速度に基づいて示します。

データ ソース

サーバー ロジック

行数

最適なテクノロジ

サーバー上のフォーマット済みデータ ファイル

直接挿入

< 1000

BULK INSERT

サーバー上のフォーマット済みデータ ファイル

直接挿入

> 1000

BULK INSERT

サーバー上のフォーマット済みデータ ファイル

複雑

< 1000

テーブル値パラメータ

サーバー上のフォーマット済みデータ ファイル

複雑

> 1000

BULK INSERT

リモート クライアント プロセス

直接挿入

< 1000

テーブル値パラメータ

リモート クライアント プロセス

直接挿入

> 1000

BULK INSERT

リモート クライアント プロセス

複雑

< 1000

テーブル値パラメータ

リモート クライアント プロセス

複雑

> 1000

テーブル値パラメータ

次の例では、Transact-SQL を使用して、テーブル値パラメータの型を作成してその型を参照する変数を宣言し、パラメータ一覧を入力して値をストアド プロシージャに渡す方法を示します。

USE AdventureWorks;
GO

/* Create a table type. */
CREATE TYPE LocationTableType AS TABLE 
( LocationName VARCHAR(50)
, CostRate INT );
GO

/* Create a procedure to receive data for the table-valued parameter. */
CREATE PROCEDURE usp_InsertProductionLocation
    @TVP LocationTableType READONLY
    AS 
    SET NOCOUNT ON
    INSERT INTO [AdventureWorks].[Production].[Location]
           ([Name]
           ,[CostRate]
           ,[Availability]
           ,[ModifiedDate])
        SELECT *, 0, GETDATE()
        FROM  @TVP;
        GO

/* Declare a variable that references the type. */
DECLARE @LocationTVP 
AS LocationTableType;

/* Add data to the table variable. */
INSERT INTO @LocationTVP (LocationName, CostRate)
    SELECT [Name], 0.00
    FROM 
    [AdventureWorks].[Person].[StateProvince];

/* Pass the table variable data to a stored procedure. */
EXEC usp_InsertProductionLocation @LocationTVP;
GO