Internet Explorer 6 と標準

Dave Massy
Microsoft Corporation

March 26, 2001
日本語版最終更新日 2001 年 5 月 24 日

この記事は、もともと MSDN Online Voices のコラム "DHTML Dude" に掲載されたものです。

標準サポートに関するトピックは、必然的に多くの激論と強い関心を引き起こします。また、残念ながら何が標 準で、何が標準ではないか、どの製品がどの標準をサポートしているかに関し て、不的確な発言がいくつかなされました。私は、多くの異なる標準やレベル を見失わないようにしていくことが非常に困難になって行くに従い、このような 不的確な発言が不注意に行われることが頻繁になってきていることに気がつきました。

私は、このような論争を呼ぶトピックから身をかわすのではなく、このコラムで再度標準に関して議論することを決心しました。もちろん、このトピックは Internet Explorer 6 Public Preview の有用性とある重要な標準の勧告に対して強化されたサポートに関連します。

標準に関する昨年のコラムに戻って読み直してみると、インターネット標準に関するマイクロソフトの見解として、その最終段落を再掲するのが相応しいのではないかと考えました。

「マイクロソフトは、インターネットの標準と標準化のプロセスを非常 に強く信頼しており、顧客から要請があれば適切な標準を実装することをお約 束します。しかし、標準に準拠することは、多くの支持者を含めた大きな取り組 みの一部です。顧客主導の要求を Internet Explorer に取り入れ、その後それ を標準化グループに取り入れることにより、インターネットをすべてのユーザーに対 して機能に富んだプラットフォームにしていくでしょう。」

見解は非常に明確です。標準が存在したとしても、マイクロソフトがその標 準を自動的に実装することにはつながりません。マイクロソフトは本当に顧客に役に 立つと確信できる適切な標準を実装していくことになるでしょう。

私は、これはすべての企業にとって適切な見解だと信じています。標準であれ ば良いもので、標準でなければ悪いものであるという見解を持つ企業もあります。 これは私自身には受け入れることができない見解です。Netscape/Mozilla が innerHTML 機能の有益さを認め、標準化推奨の一部ではないという事実にもか かわらず、その最新の取り組みにその機能を含めたことは私にとっては新鮮で、興 味深いことです。

Internet Explorer 6 による標準のサポート

Internet Explorer 6 は次の 2 つの重要な World Wide Web Consortium (W3C) 標準の勧告を採用しています。

  • CSS (Cascading Style Sheets)

  • DOM (Document Object Model)

Internet Explorer チームは、このリリースで CSS 1 と DOM レベル 1 の 100% をそれぞれ高速で安定した実装をすることに多大の労力を注いできました。 昨年、これらの標準をサポートするほかのブラウザが出現したことにより、ブラウザの相 互運用性は明らかに一歩前進しました。

もちろん、これは多くの理由でブラウザの相互運用性を保証するものではありません。残念ながら、Web 開発者が作成したものをさまざまなブラウザでテストする必要がなくなる時が訪れることを予想できないのではないかと思います。この理由をいくつか示します。

  • 古いバージョンのブラウザ。 多くの人々は古いブラウザを使用し ていて、すぐにアップグレードするつもりはありません。ユーザーのコンピュータに関する知識から、ブラウザのアップグレードを思いとどまってしまうかもしれません。あるいは、企業内で古いブラウザに標準化されていて、アップグレードを妨げているかもしれません。標準化サポートに対する 1 つの特別な支持者である Web Standards Project (WaSP) は、ブラウザをバージョン 5 のリリースにアップグレードすることをユーザーに勧めるキャンペーンを行っています。 http://www.webstandards.org/ Leave-ms を訪れて、サイトを見た人がこのメッセージを受け入れる可能性があるかどうかを判断で きます。

  • その他のデバイス。 インターネットに接続するために新たに登場 したデバイスの一部は、完全なパーソナル コンピュータほど能力がなく、アップグレードでき ないブラウザが装備されています。その結果、サイトがあらゆるデバイスからアクセス可能 であることを重要視している場合は、まったくスタイル シートを使用しない HTML 3.2 を サポートすることが現実的です。

  • 標準の解釈と実装。 多くの標準化に関する勧告文書 が膨大な量の詳細仕様に言及していますが、一部の詳細仕様が未定義であったり、 異なる解釈が可能であることはどうしても避けられないことです。このような詳細仕様の 多くは、標準に完全に準拠するための記述がなされていない HTML や CSS コンテ ンツの解釈の間違いを生じます。このような間違った構文は、ブラウザごとに異なる方 法で解釈される可能性があります。CSS に関するこれらの問題点の一部を回避する には、W3C が http://jigsaw.w3.org/css-validator/ Leave-ms で提供しているような評価ツールを使用 して、作成した CSS を実行してみることです。

重要な標準に対するサポートが、相互運用性にとって重要であることは明白です が、それに対する保証はありません。そのため、Web の開発者はこのことに注意深く対 応する必要があります。優れたオーサリング ツールや評価ツールを使って、さまざまなブ ラウザやデバイスで適切に表示されるコンテンツを作成できるようにする必要があります。 もちろん、私たちの多くはコンテンツをスタイルとは無関係に更新できるように、コンテン ツとスタイルを切り離すために CSS を使用する明確な利点を認識しています。 多くの Web 開発者と同様に、私は古いブラウザでコンテンツがどのように表示されるか 考えずに CSS や DHTML テクノロジが使えるようになる日が来るのを夢見ています。 おそらく、インターネットにその日が来るまでには長い時間がかかるでしょう。しかし、最新 バージョンのブラウザで標準化している多くの企業にとっては、その日は既に現実のもの となっています。 多くの企業イントラネットでは、欠勤レポートや経費レポートなどの生産性向上ソリュー ションは、クライアント マシンに別の機能をインストールする必要なしに、サーバーに配置 できます。配置が容易であれば、費用の節約になり、アップデートをすばやく、簡単に配 置できるだけでなく、すべてのユーザーが最新バージョンを使用していることを保証できま す。

特定の種類のコンテンツに関しては、あるユーザーにとっては受け入れられないこと であっても、ユーザーによってはブラウザを自発的にアップグレードする場合があります。 すべてのユーザーの受け取り方はわずかずつでも違いがあるので、既存のユーザーをあな たのサイトから遠ざけることなしに、これらの機能を使用する方向へ進めるかどうかを決 断するのはあなた自身です。

互換性と標準

私たちが Internet Explorer の新しいバージョンを開発しているときに、変わらず持 ち続けている概念は、既存のコンテンツとの互換性を保持することです。私たちは、既 存の DHTML コンテンツが設計されたとおりに機能し、表示され続けることを明確に保 証したいと考えています。これは、プラットフォームが新しい機能を持つように進化してい くときは非常に困難なことです。Internet Explorer 6 での CSS1 および DOM レベル 1 の標準のサポートを完了するためには、標準に準拠するほかのブラウザが使用してい るのと同じ DOCTYPE スイッチを HTML 文書に記述する必要があります。この スイッチは HTML 要素の前に記述する必要があります。そうでなければ、既存の コンテンツを壊してでも完全に標準に準拠した CSS 機能を強制します。 このスイッチを使用し、このスイッチがページにもたらす効果を理解するには、MSDN Web Workshop の サンプル ドキュメント をご覧ください。

Internet Explorer 6 での DOCTYPE スイッチと CSS 機能強化の完全な詳細仕様については、http://msdn.microsoft.com/workshop/author/css/overview/CSSEnhancements.asp をご覧ください。

これらの変更により、以前のバージョンからのステップを完了し、Internet Explorer 6 は W3C CSS1 テスト スートに 100 パーセント合格します。ご参考までに Internet Explorer 5.5 は約 86 パーセント合格していました。

今後の標準

私は、多くの方々が「いつごろ標準 X を完全に実装する予定ですか ?」と質問してくることは分かっています。この X には、その人のお気に入りの標準が入ります。たとえば、MathML、SVG、CSS2 などです。マイクロソフトは各標準を個別に見ていき、顧客にとってそれがどの程度重要かを判断していくでしょう、というのがその答えです。MathML など新たに出現した標準は特に興味深いものの 1 つです。

明らかに、マークアップを使用して Math コンテンツを表示する能力は、潜在的に複雑な情報を伝達する教育や技術的な事例では役に立ちます。マイクロソフトは、このコンテンツがすべてのユーザーに受け入れらるものではなく、Web ブラウザを起動するたびに重い負担をかけるという考え方を支持します。そのため、マイクロソフトはほかの機能でこの機能を提供するように、Internet Explorer 5 で導入したビヘイビアというコンポーネント テクノロジを使ったフックを提供します。この結果、この分野の専門家は HTML ドキュメントに非常に緊密に統合される Math レンダリング コンポーネントを供給できます。

説明しておく価値のあるもう 1 つの例は、Internet Explorer 6 のスタイル上の機能強化で、これはテキストが利用可能な領域に収まらない場合に自動的に省略形を提供します (この機能では、text-overflow スタイルが適切に設定されている必要があります)。この例は、http://msdn.microsoft.com/workshop/samples/author/css/textOverflow.htm で確認できます。これは、マイクロソフトが顧客の要求を聞き、優れたソリューションの構築を支援するためにプラットフォームに機能を追加した一例です。その一方で これを今後の CSS3 標準に含めることを保証するように、W3C および CSS ワーキング グループのメンバに働きかけています。

今後数か月に渡って、私は Internet Explorer 6 の興味深い機能をいくつか説明する予定です。開発チームは、この製品の最初の Public Preview に関するフィードバックを期待しています。


Dave Massy は、時折サングラスをかけて Dude を気取っていますが、サングラスをはずしたときは、Windows と Internet Explorer のテクニカル エバンジェリストとして働いています。彼の役目は、Microsoft のお客様がどうすればそのテクノロジを最大限に利用できるかを話すことです。Dave はテクニカル エバンジェリストになる前は、Internet Explorer チームのプログラム マネージャとして働いていました。Dave は生まれながらに英国に住んでいるので、アメリカ人の同僚にいかにトマトを正しく発音させるかという難題に果敢に取り組んでいます。


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